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日本の活力衰退、働く展望と幸福感、共同体から切り離された賃金労働の問題

※衆議院議員総選挙結果から見える、今後の日本の行方 [1]

先日の衆議院選挙に関して、興味深い分析記事が目に留まりました。
※日本の政治的な対立の深層は、どこにあるのか(吉田繁治氏 ビジネス知識源)

https://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=372307 [2] https://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=372308 [3]

日本の政治的な対立の深層は、非正規雇用が多く年金期待も低い49歳以下の世代と、正規雇用が多く年金期待が高い50歳以上の世代であるとし、高齢層だけでなく前者をどの政党が意識して取り込むかが争点となるという分析記事です。(米欧では自国労働者と移民の問題だが、日本では正規/非正規雇用の所得格差という構図)

今回の選挙で言えば、自民党が「分配」を示唆することで浮動層の取り込みに成功し、反自民の受け皿となったのは維新の党、れいわ新選組(山本太郎)であり、完全敗北したのが立憲民主党。立憲民主は大企業労組(つまり大企業正社員)が支持母体でありながら、共産党的な弱者救済をいう不整合が見透かされたということです(そもそも、批判ばかり叫ぶ人は敬遠される意識潮流を読めていないという資質上の問題もありそうですが)。

もちろん自民党支持は「消極的現状維持」の選択でしかなく展望などないのですが、2000年代あたりから若年層の支持は厚く、分断を丸のみしようとする巧妙な戦略が見て取れます。

今回の選挙でどの政党も「分配」(給付金云々)を政策の中心に言うのはなぜだろうと思っていたのですが、(コロナの影響だけでなく)上記のような事情を考えれば合点がいきます。

しかし客観的に見れば、日本の政治全体が分配の範囲だの条件だの、ちまちました議論に終始しているのは、「日本が落ち目である」ことを示していると思います。先進国からの脱落(一人当たりGDP、賃金、貧困率)、縮小する実体経済、原資を国の借金に頼るしかない、そのなかでの分配議論に未来の展望があるとは思えない。

このことは日本において、「働く」ことをめぐる展望、意欲、活力、充足(幸福感)をどう再生するかという深い課題でもあります。

そもそも、なぜ非正規雇用が増えたのか、という分析も重要です。

※各世代の非正規雇用の割合:総務省労働力調査https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0209.html [4]

年齢階級別の非正規雇用率です(2020年の最新データ)。15歳から24歳:52%、25歳から34歳:34%、35歳から44歳:50%、45歳から54歳:47%、55歳から64歳:66%、【平均50%】

※非正規雇用はなぜ増えたのか?本当は何が問題なのか?構造的な理由を解説 https://keizainote.com/1063/ [5]

 

2020年では、200万の企業の雇用者の約50%が非正規雇用です。

データから読み取れるポイントは、正社員が減ったから非正規雇用が増えたというわけでもなく、雇用労働者(正規と非正規の合計)そのものが増えている。つまり、自営業、家族経営従事、個人事業主など、自分たちで切り盛りする商売が減って、「賃金労働者」ばかり増えている。

その要因は、おそらく市場競争で生産性の低い事業が淘汰されていく流れですが、問題はそれによって、地縁、血縁、地域共同体が衰退していること。また同時に企業においても、雇用労働者は市場経済に生きる個人として扱われ、かつてのような大家族的、生産共同体的な風土が損なわれてきたことです。

「共同体から切り離された賃金労働者」(市場経済の中のバラバラの個人)として生きていかなければならない事態が進行している、ここに問題の本質があると思います。

 

つまり、国政選挙や分配政治の背後に隠れた問題構造は、「日本が落ち目である(活力どん底)←働くことの展望・幸福感の低下←共同体から切り離された賃金労働」、といったあたりではないかと思うのです。

(このように考えると、政府、役所、大企業が進める「ワークライフバランス」「働き方改革」がいかに的外れであるか、よくわかります)

やはり、★日本の活力は、「集団」の再生にかかっている!http://blog.nihon-syakai.net/blog/2021/09/12823.html [6]

 

by Yusuke

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