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【日本の活力を再生する】新たな集団関係(2) ~同類闘争のパラダイム~

前回より、『新たな集団関係』というシリーズで、「贈与ネットワーク」が現実社会で市場原理を止揚し統合していく可能性を追求し始めました。

前回記事では、「契約と贈与」の違いを紐解きました。信頼・信用のおけない他者との「利益の相互約束」が「契約」関係であることに対し、信頼と信用が基盤となる贈与こそが、答えのない未知だらけの時代において、挑戦する仲間・同志をつなぐ追求関係を構築する可能性ではないかと検証しました。

 

今回も引き続き、「贈与ネットワークで勝っていけるのか?」をテーマに、本源時代の市場競争=集団間の同類闘争に照準をあてて追求します。

■市場競争=同類闘争のパラダイム転換(市場の制覇力は資本力⇒追求力)

かつて世界の経済大国2位と言われた日本の競争力が没落してから久しい。2021年度の世界企業ランキング [1]では、国内TOP企業のトヨタは28位。アジアの中でも遅れをとっているのは誰の目にとっても明らか。

 

私権獲得こそが活力源だった時代。市場拡大のために求められたのは大量生産のための徹底的な効率化と品質管理体制。その最たるビジネスモデルが自動車産業に代表される垂直統合型の体制。4万社に及ぶサプライヤーを統合し、日本は世界に類を見ない高品質な製品を大量に世に排出する技術大国として成長しました。

これだけ過去に市場を牽引した日本企業がなぜ今競争力を失っているのでしょうか。

 

大企業はなぜイノベーションを起こせないのか [2](抜粋)

成功はある種の誘惑を伴う。人は過去の成功体験と同じことを繰り返したがるものであり、何十年にもわたり成功を収めてきた企業ならなおさらだ。(中略)

成功するビジネスモデルを見つけたら企業では、そこから最大限の利益を得ることが経営陣の目的として設定される。つまり、ほとんどの企業では、現在成功しているビジネスモデルを管理する構造が作られている。会社組織、運営、プロセス、ツール、文化が全て、これまでやってきたことを繰り返すために調整されるのだ。

これは必ずしも悪いことではない。企業は今ある強みを利用しなければならない。結局のところ、売り上げや利益はそこから生まれているのだから。

企業が犯す過ちは、既存事業からの利益吸い上げのみに集中してしまうことだ。あらゆるビジネスモデルには寿命があり、衰退は避けられない。実際、ビジネスモデルの寿命はどんどん短くなってきている。

よって、既存のビジネスモデルのための組織を作ってしまうと、その企業の寿命はビジネスモデルの寿命に左右されてしまうことになる。ビジネスモデルが衰退する時、企業も同じく衰退するのだ。

 

私権から共認への意識潮流で市場が縮小する中、人々の私権欠乏に導かれたビジネスモデルに縋りつくしかなかった大企業では新しいものが生まれなくなっています。

資本力が市場の制覇力だった時代から、人々の意識は共認・本源充足へ価値軸を移しています。とことん期待に応える少量多品種の生産。モノではなくコトにお金を費やす時代。かつての垂直統合型によって管理されてきたサプライヤーの中には、下請けとして磨いてきた技術力を活かして、現代の意識に応える新たな市場を作り出しています。

 

東京下町の町工場が15年で取引先を120倍にできた理由 [3](抜粋)

■量産型から一品物・試作品の仕事へ

・量産型の仕事ではなく、精密板金加工と呼ばれる手法で、少量多品種の部品を生産することにシフトチェンジ

大企業の工場は、試作品などの「一品物」や「少量多品種の部品」の生産に対し、柔軟に対応することには向いていない。

・浜野製作所では「こんな形の部品、製品は作れないだろうか」といった顧客からの相談に対して、一つ一つ柔軟に対応

・試作品の仕事で当社の存在、技術力を知ってもらい顧客との接点、信頼関係を作り、小さな仕事から大きな仕事へつなげる。

 

 

贈与経済の取引関係が人々を繋ぐ時代に転換している! [4](抜粋)

■>町工場と農業つなぐ “新ビジネス”

・農機具の部品の特注にたった1つから応じる。折れた部品を元に、10万円ほどでシャフトを復元。買い換えれば200万。

・農機具の修理や改造などを専門とする、異色の会社。社員はわずか4人。

・群馬県東部を中心に、120以上の町工場をネットワークで結び、自動車メーカーなどの下請けで培った技術力を生かしている。

・それぞれの得意分野を把握して、発注先を選ぶ。シャフトの歯車を加工した町工場は、試作品の製作を得意としている。

・町工場を効率的に結びつけることで、今では、年間7,000万円分の仕事を発注。

 

我が国の企業数の99.7%は中小企業。失敗を恐れない試作・追求をする集団こそが新しい価値創造の基盤となっていくと同時に、中小企業を中心として自社の強み(特異技術・ノウハウ)を共有し、新しい期待に応えていくためのネットワークを構築しています。

そして、今市場のパラダイムが大きく転換していく中で、富士フィルム(写真事業⇒ヘルスケア)に代表されるように、AGC(ガラス生産⇒素材)など大企業もこれまでの自社の得意分野や基礎技術を深化させ他社との協業も視野に新たな業態への挑戦をし始めています。そして、その挑戦の背後にあるのは、自社の強みである基幹技術=追求力そのもの。

これまでは自社技術などは秘匿分野であり、他社との共創などあり得なかった時代から、お互いの強みを「贈り合う」「認め合う」まさしく贈与関係で新たな市場を生き抜く時代になっているといえます。

 

他社を蹴落として獲得する縄張りではなく、お互いの強みを活かしあい、市場(縄張り)を重ね合う闘い。それは多様な同類他社を「受け入れて成長する」これまでとは違った市場競争⇒共創の姿から「贈与ネットワーク」の現代における本質が見えてきそうです。

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