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魔術から近代科学へ17~生産効率絶対という短絡思考が、西欧のエネルギー使用と専門分化を加速させた~

Posted By KAWA On 2012年6月27日 @ 11:30 PM In 13.認識論・科学論 | 65 Comments

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魔術から近代科学15~直感性能(潜在思念)を劣化させた近代科学は架空観念(数学)で自然を対象化するしかなかった~」(リンク [2])。
西欧の架空観念ありきで、それに都合の良い自然観察、実験の仕方をするという近代科学の源流が西洋で生み出された。
引き続き山本義隆氏の『磁力と重力の発見』から「第8章 ペトロス・ペレグリヌスと『磁器書簡』」の要約を引用しながら、西洋の科学技術がどこで道をはずし、どのように科学技術を進めていったのかを見ていきたいと思います。
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ベトロス・ベレグリヌスと『磁気書簡』
1磁石の極性の発見と考察
磁石と磁針の指北・指南性を実験物理学の対象としてはじめて研究したのは、トマス・アクィナスやロジャー・ベーコンらと同時代のベトロス・ベレグリヌスであった。実験物理学のはじめての実践である。
彼の著書である『磁気書簡』は、1269年にイスラーム教徒の居住地の攻撃に従軍していたベレグリヌスがその年の8月8日に野営地から同郷人にあてた手紙である。
磁石同士がときに引き合い、またときに反撥しあうことはアルベルトゥス・マグヌスやロジャー.ベーコンも現象としては気づいていたようだが、ペレグリヌスはそれを整理して統一的に捉えた。そしてその現象を磁極と関連づけた。すなわち北極同士ないし南極同士は反撥しあい北極と南極は引き合うという法則性の発見である。そして磁石が切断すると、北極を十(プラス)、南極をー(マイナス)で表すと、磁石【+ -】を中央で切断すれば、【+ -】【+ -】となることを発見したのである。

磁石に関して、以前は現象を魔術的現象と捉えたり、神の所業と捉えていたが、ペレグリヌスは磁石についての目的意識で能動的な観察・実験と合理的な考察を行うことで以上のような数々の発見に至った。
では数々の発見に至った実験的考察はどのようなものだったのか。

2ペレグリヌスの方法と目的
ペレグリヌスによる両磁極とその引力・斥力の相関の発見だけでなく、彼がその発見に到達した方法も、あるいはその発見に導いた目的もまた、その先駆性において傑出している。
方法という点では、ペレグリヌスの磁力研究においてなによりも著しいのは、計画的で能動的な実験と観察にある。
『磁器簡書』でベレグリヌスは磁石の極を見出す方法や棒磁石の切断と接合の実験を記しているが、それはともに磁石にたいする目的意識的でコントロールされた実験の最初の記述である。
18世紀にカントは『純粋理性批判』で、近代自然科学の方法の特徴を次のように述べている。
「理性は一定不変の法則にしたがう理性判断の諸原理を携えて先導し、自然を強要して自分の問いに答えさせねばならない。自然から教えられるのだが、その場合に理性は生徒の資格ではなく本式の裁判官の資格を帯びるのである。生徒なら、教師の思うままのことを何でも聞かされてだけいなければならない。しかし裁判官になると、彼は自分の提出する質問にたいして証人に答弁を強要する。」
これは一方で所望の効果を人為的に拡大し、他方で予測される副次的攪乱要因を抑制して理想化された状態に近づける、目的意識的に計画された実験処方を指している。
カントが以上の文をガリレイの実験を念頭において記されたものだが、実質的に三五〇年前にべレグリヌスによる磁極の発見の実験において実現されていたのである。

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3永久機関
ベーコンやペレグリヌスが時代をまったく超越していたわけではない。実際にはこの時代にヨーロッパでは、イスラーム社会との接触や技術の発展によって機械技術にたいする新しい見方が少しずつではあれ芽生えていた。
軍事技術者ベレグリヌスは「自由学芸」と「機械技術」のいずれの「術」にも通じていたと判断される。ツィルゼルは1627世紀科学革命が底辺では学者の知識と職人の技能をあわせもった「高級職人」に支えられていたとしているが、ベレグリヌスはまさにそのような「高級職人」の先駆者であろう。
『磁第書簡』に書かれているベレグリヌスの研究の最終目的は「枯渇することのない動力源として磁力を使用する永久運動機関(自動回転車撃の考案)」である。
1558年にはじめて印刷された版のタイトルは『磁石ないし永久遊動車輪についての書簡』とあり、そして19世紀のベンジャミンの書物では、ペレグリヌスが磁石を研究し『磁気書簡』を書いた真の意図は、永久運動機関の製作にこそあったと書かれている。
磁力という自然力を動力源に利用することがベレグリヌスの磁石研究のひとつの重要な狙いであったことは疑いえない。それは、言うならば、電磁エネルギーの力学的エネルギーへの転換の人類史上はじめての試みであり、成功したか否かにかかわらず、構想したこと自体が決定的である。そしてこれこそが、ロジャー・ベーコンが「経験学の第三の特権」で目指していたことの具体的な実践に他ならない。
ベーコンがその経験学を構想した背景にはイスラーム社会における高度な技術力にたいする認識があったと考えられることを前章で指摘したが、ベレグリヌスにとってはこの点はより以上に直接的であろうと推察される。
実際、ペレグリヌスは従軍地で、直接イスラーム軍と戦っているのである。科学史家クロンビーの言うように「ベレグリヌスのおこなった実験のいくつかに刺激を与えたのはアラビア人の仕事であった」ということは、無理な想像ではない。
彼がイスラーム文化から吸収したものがあったとすれば、自然現象にたいするそれまでのヨーロッパにはなかった新たな接し方それ自体ではないだろうか。
クロンビーは「自然界の諸問題にたいするアラビア人の特殊な接近方法」として、
「自然のどの側面が神の道徳的な目的をもっとも鮮やかに説明するかということでもなければ、聖書に記されているあるいは日常経験の世界で見られる諸事実を合理的に説明する自然的原因がなんであるかということでもなくて、いかなる知識が自然支配の力を与えるか」

という問題設定をあげているが、ペレグリヌスの磁石研究の真の動機も根本的な新しさも、まさにこの実用本位の態度にあった。修道士ベーコンにおいては経験学はあくまでもキリスト教社会の防衛という目的に従属するものであったが、『磁気書簡』に関するかぎりペレグリヌスにはそのような配慮は毛頭見られない。のみならず自然の力を説明するという姿勢すらも希薄で、むしろ自然力の技術的応用それ自体が目的とされているのである。
このようにぺレグリヌスの『磁気書簡』のスタンスはきわめて近代的で、中世キリスト教社会の精神的世界を超越しているように見えるけれども、それでもやはりそれが生まれるだけの基盤は存在していた。
実際リン・ホワイトの著書によると、13世紀にヨーロッパの技術者を熱中させていたのは、重力で駆動する時計の製作だとある。動力の問題は技術者の共通の関心事であった。そんなわけで、ペレグリヌス自身が上記の引用ではっきり認めているように、この時代に永久運動機関を考案した技術者は彼以外にもいた。

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4社会的背景
古代の権力者のようにおびただしい数の奴隷労働に依存することのできないかったこの時代には、新しい動力源の開発あるいは新しい動力装置の考案は、すくなくとも技術にたずさわる者のあいだではそれなりに広く関心を集め、強く意識されていたのであろう。
同時代のロジャー・ベーコンが書いたと言われる『魔術の無効について』では、「たとえ自然が強力にして驚くべきものであるにしても、それでも自然を道具としてもちいる術は自然の力以上に強力である」とはじまり「たった一人で操作することができ、漕ぎ手がいっぱいいるときよりもはるかに速く動く航海用の大きな船を作ることができる。動物の助けを借りずとも信じられぬスピードで動く車も作りうる」といったたぐいの技術予想がいくつも記されている。
これは本当にベーコン本人が書いたものかどうかは疑問視されているが、それが他人の手によるものにせよ、少なくともこの時代にこのように新しい動力源に想いを馳せた無名の技術者がベーコン以外にも幾人もいたことを示唆している。ベーコンは単に孤独な夢見る人として語っているのではなく、むしろ当時の技術者たちを代表して語っているのである。
現実に、ヨ―ロッパではこの時代にエネルギー使用は急速に増大している。そのことは、11世紀以降に多くの水車が新設され、使用可能なエネルギー量が飛躍的に増大したことに見て取れる。
水車の数の増大とともに、水車の適用範囲も大幅に拡大した。製粉や製材以外の縮絨や鍛鉄への水車の利用の証拠は11世紀に現れる。12世紀末に「製鉄水車」が登場し、13世紀以降それは砕鉱その他の製錬の工程に広く使用されるようになり、それによって鉄の生産量は飛躍的に増大することになった。こうして軍事はもとより農具から馬の蹄鉄や鐘にいたるまで鉄が広く使用されるようになった。
このように、この時代は多くの産業分野に技術革新の披が押し寄せ、その担い手として高い知的関心を有する技術者・職人層が産み出されていたのである。蛮族の侵入以降11世紀頃まで、ヨーロッパは基本的に農耕社会であったが、12世紀の都市の勃興と大学の形成以降は、知的分野において修道院のはたす役割の比重が低下し、聖職者による知の独占は掘り崩されてゆくことになった。
かくして13世紀には、大学でいわゆる「自由学芸」を修め、社会の技術的要請に応えうる専門家としての実力を身につけ、知識を生計の手段とした新しい階層としての都市市民が登場することになる。ベレグリヌスはおそらくそういう世俗の知識人ないし技術者の一人であったのだろう。

中世ヨーロッパはイスラームの科学技術に遅れを取っていた。ロジャー・ベーコンもイスラムの錬金術に大きな影響を受けている。「蒸留技術とイスラム錬金術」 [5]
しかし、その後、ヨーロッパは急速に科学技術を発展させた。それは何故か?
【1】まず、エネルギー使用の増大である。
ヨーロッパでは、11世紀以降、水車や製鉄をはじめとするエネルギー使用が飛躍的に増大する。
近代の科学者たちの追求対象は主に、力・熱・電磁気などのエネルギーであったが、その目的意識は、自然からエネルギーを取り出して人間が活用することであったろう。中世~近世の科学者が永久機関という人間に都合の良い機関の開発に躍起になったのも、それが理由である。実際、魔術や錬金術的発想から生まれた永久機関の追求の中から熱力学の第一・第二法則が導き出されている。そして、このエネルギー使用と開発の行き着いた果てが原子力である。
【2】また、エネルギー使用と平行して、近世以降、専門分化が加速してゆく。
兵器需要と貨幣需要の増大によって、鉱業・製鉄業の生産規模が拡大し分業化が進行する。そこで賃金労働という労働形態が登場し、資本家-経営者-賃労働者という階級分化(資本主義的生産関係)が始まる。同時に、賃金労働者はそれまでの職人のように全工程を請け負うのではなく、部分的な工程が割り当てられ、専門分化が加速してゆく。
「兵器需要と貨幣需要から発達した鉱業が近代の科学と賃金労働の起点」 [6]
そして、技術者(職人)だけではなく、科学者の専門分化も加速してゆく。
【3】生産効率第一という短絡思考がエネルギー使用と専門分化を加速させた。
近世以降市場拡大とともに、エネルギー使用と専門分化が加速してゆく。
それを加速させたのは、市場拡大に伴う物欲上昇と利益追求第一⇒目先の生産効率を全てに優先するという目的意識である。
つまり、この目的意識一点に収束した近代科学は、エネルギー使用と専門分化によって生産効率を著しく上昇させた。これがヨーロッパが全世界を制覇した直接の理由である。
ところが、目先の生産効率が全てという目的意識の下では、自然の摂理や仕事の充足は捨象される。生産効率第一という目的意識も、共同体(共認充足)が破壊され自我収束した西欧人の短絡思考の産物である。
「近代科学は短絡思考の産物である」 [7]
それに対して、ヨーロッパより科学技術が先行していたイスラム社会で科学がその後発展しなかったのは、イスラム社会では共同体(共認充足)が残存してたため短絡思考にはならず、目先の生産効率より共認充足や自然の摂理を重視されていたためである。
【4】生産効率第一に導かれた、際限ないエネルギー使用の果てが地球破壊であり、専門分化の行き着いた果てが科学者の無能化である。
そして両者を象徴するのが、原爆・原発開発である。
「金貸し主導の戦争→国家プロジェクトの手先となり、アホ化した科学者たち」 [8]
「専門分化による高度化・効率化には大きな限界がある」 [9]
このことは、目先の生産効率が絶対という近代科学の目的意識を、自然の摂理と共認充足という新たな目的意識に塗り変えることが不可欠であることを示唆しているだろう。


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[5] 「蒸留技術とイスラム錬金術」: http://www.geocities.jp/bhermes001/aromatopia0.htm

[6] 「兵器需要と貨幣需要から発達した鉱業が近代の科学と賃金労働の起点」: http://blog.nihon-syakai.net/blog/2011/11/002143.html

[7] 「近代科学は短絡思考の産物である」: http://blog.nihon-syakai.net/blog/2012/06/002291.html#more

[8] 「金貸し主導の戦争→国家プロジェクトの手先となり、アホ化した科学者たち」: http://blog.nihon-syakai.net/blog/2011/09/002072.html

[9] 「専門分化による高度化・効率化には大きな限界がある」: http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=265317

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