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ユーロ危機1 ヨーロッパ各国が抱える「歯止め」を外すことになったユーロ導入

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経済指標指数グラフ 【各国比較】1972年=100とした各経済指標の指数グラフ。 主要国株価、為替、NY原油、ロンドン金、国内金、地価、 公定歩合、経済成長率、消費者物価指数を掲載。 [2]

7月末から8月初に掛けてアメリカ・デフォルト危機が騒がれてきたが、ギリギリで債務上限法案が議会を通過し、先延ばしにされた。
一方で、9月から再び危機が叫ばれ始めたのが、ユーロである。2010年に噴出したギリシア危機は、抜本的な解決策が見出されず、2011年9月に再び危機が再燃した。今やギリシアの短期国債の金利は100%を超える水準にある。
このユーロ危機は、ユーロが持つ構造的欠陥に負うところも大きい。
そこで今回は、
・ヨーロッパにとってのユーロのメリットは?
・逆に、ユーロのデメリットは?
・ユーロ延命のために、ヨーロッパはどういう手を打ってくるか?

について追求してみたい。


近代市場誕生以降、第一次世界大戦までは、市場社会の中心はヨーロッパ、中でもイギリスであった。しかし、二度の大戦によってヨーロッパは疲弊し、大戦後は米ドルが基軸通貨となった。以後、アメリカ一極支配が続く。
しかし、アメリカも基軸通貨の弱点構造(為替が高止まりしてしまうことによって、貿易赤字が拡大する)にハマってしまう。そこで、’71に固定相場制を廃止、金ドル兌換を廃止してしまう(’71 ニクソンショック)。その後も、アメリカが基軸通貨特権を使って、露骨な市場介入を繰り返す。
この頃(70年代ごろ)から、ドイツ、フランス、イギリスを中心に、ヨーロッパ通貨統合案が浮上する。基軸通貨特権を振りかざすアメリカに対して、ヨーロッパ経済圏を確立し、ドルに対抗しうる第二の基軸通貨を構築しようとしたのである

■ヨーロッパにとって、ユーロのメリットは?
ユーロ圏内での、輸出大国であるドイツなどと、経済規模の小さいギリシアなどでは、ユーロ導入の意味は異なる。

○ドイツなどの輸出大国にとっての、メリットは?
ユーロに先立って実現されたECC,ECなどにおいて、関税などの貿易障壁が撤廃された。このことによって、ユーロ圏内でドイツ製品が売れやすくなる。ユーロ加盟国の中には、製造業が発展途上で、活発な消費が期待できた。
また、アメリカやアジアでの輸出にしても、ドイツ・マルクを使っていれば、輸出増によってすぐにマルク高になってしまうが、ユーロを使えば為替変動が抑えられるため、為替リスクが大きく縮小する。ドイツの輸出が盛んになり、経済成長が望むことができた。

○ギリシアなどの経済規模の小さい国にとっての、メリットは?
人が国境を越えて移動する際の制約が低くなり、観光客をかき集めることが可能になる。
財政規模以上に国債を発行すると、金利が上昇しすぎるため歯止めが掛かるが、ユーロ建てであれば通貨リスクがほとんどなくなるので、ほぼ無限に国債を発行できる=財政赤字に歯止めが掛からない。
こうして、「通貨リスクが無い上に、ある程度金利が高い」という状況が南欧で生まれる。この結果、世界のマネーが、南欧に殺到。国債が売れるので、財政赤字に歯止めが掛からなくなった。そして、世界中のマネーが不動産に向かったため、南欧での不動産バブル発生。

★ヨーロッパが多数の国家に分割されていると、市場の調整メカニズムによって経済成長に歯止めが掛かってしまう。
★通貨統合することによって、各国ごとの「歯止め」を外し、経済成長を実現しようとした。
☆逆に、この「歯止め」を外したことが、ユーロの構造的欠陥に繋がっていく

(つづく)
(ないとう)

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