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(石を使ってアブラヤシを割る:画像は朝日百科より)
前回のエントリーでは、今後の社会統合機構を考える上で、前提として置かれた環境を貫く闘争圧力の把握が決定的に重要である事を明らかにした。
そして、土地や財(私権)を巡る闘争圧力が国家=序列体制を形成したことを明らかにした。
国家が形成される以前は、身分も支配関係もない原始共同体の時代である。この原始人類の集団はどのように統合されていたのだろうか。その時代の集団生活に関する遺跡は極めて少なく、未明領域も多い。しかし、人類はサルから進化した(人類とチンパンジーは共通の祖先である)ことも明らかであり、サルを研究することは人類の原始時代を推し量る上で極めて重要な手がかりを与えてくれるだろう。
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霊長類の場合、樹上という第四世界を手に入れたために、外敵との闘争よりも同類との闘争の方が主要な課題となり、この新しい状況(外圧)に適応すべく(同類闘争に対応する本能など存在しないので、本能を超えた)共認機能を形成していった。(実現論1_4_00『サル時代の同類闘争と共認機能』を参照して下さい。)
最先端の同類闘争に適応すべく形成された共認機能、とりわけその最先端の評価共認は、全ての本能を自らの下に収束させた統合機能となり、同時に(全ての機能を収束させている訳だから)最大の活力源ともなる。
(注:詳しくは、最先端圧力たる同類闘争の圧力に適応する為の最先端機能である共認機能、およびその共認内容を最適のものに収束=統合させる評価共認という、二重に塗り重ねられた共認機能が、個体(の機能or意識)や集団(の成員)を収束=統合させる統合機能となっている。)
これが、霊長類の本質であり、我々が霊長類を共認動物と呼ぶ由縁である。
超国家・超市場論4同類闘争の圧力と共認統合の限界 [2]より引用
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(表情豊かなサル:画像は朝日百科より)
サルは表情が豊かで、コミュニケーション機能が豊富であることが特徴である。多様な音声言語、ボディーランゲージ、スキンシップ(グルーミング)やマウンティングなどの様式化された儀礼行為が多く見られ、それらを寄り円滑に行えるよう顔の毛を無くし、上半身を直立できるように進化してきた。
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(直立歩行するサル:画像は朝日百科より)
サルの特徴は表情や感情表現が豊かで、同類同士のコミュニケーションが極めて豊富なことにある。
例えばサルは多様な音声言語(ニホンザルで50種)持ち、豊かなボディーランゲージを伴った感情表現を行い、スキンシップ(グルーミング)やマウンティングなどの様式化された儀礼行為なども数多く見られる。このように同類同士のコミュニケーションが高度に発達しておりそれによって集団が維持されている、そして、その結果サルは知能が著しく発達させたと考えられる。
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(イモ洗いサル:画像は朝日百科より)
実際サルは、小枝を使ってシロアリを食べるなど道具を用いる。
またイモを塩水で洗って食べる習慣を持つサル集団の事例が示すように集団固有の文化も形成されている。それに、チンパンジーでは浮気したメスに集団で制裁を加えるなど一種の集団規範を持っていることも明らかになっている。そして闘いにおいては実に高度な連係プレーを見せる。これら(文化、規範、連携プレー)からは、サルたちは課題や役割や規範を集団内の各個体が共有すること、すなわち共認機能を持っていることが推し量れる。豊かな表情も多彩な感情表現も知能もサルの特徴の全ては、これ(共認機能)に起因するものである。
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(シロアリ食い:画像は朝日百科より)
この共認機能は明らかに、一般動物の本能を超えた次元にあるものである。
実はこのサルの秘密を解く鍵は、同類(サル)集団間の縄張り闘争にあり、これも他動物では見られない現象である。
ではなぜサルには同類集団同士の闘いが見られるのか?その理由は猿の足の指にある。
猿の足の指は、手の指と同じように対角線上に動く。つまり、手だけでなく足でも木の枝を掴むことが出来る。そして、だからこそサルは木から木、枝から枝へ樹上を自在に駆け巡る事が出来るのだ。樹上に住めるということは、木の実や果実など豊富な栄養物を独占できるという事であり、他動物からの圧倒的な防衛力を手に入れたことになる。つまり樹上という陸海空に代わる第4世界を独占支配できる立場に立ったのだ。
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(樹上のサル:画像は朝日百科より)
その結果、サルは外敵(他動物)との闘争は二義的なものとなり、同類同士の縄張り闘争が第一義課題となった。しかし同類集団同士の闘争に対応する本能は存在しない。そこで、サルは同類闘争という新しい外圧に対応するために、本能を超えた共認機能を形成していったのである。
共認機能とは、相手の感情や気持ちを読み取れる(サルと人類に固有の)機能である。相手の不全(期待)と自分の不全(期待)を同一視する共感回路を原点としていおり、相手の気持ちと同化することによって充足(安心感等)を得ることができる機能でもある。相手が喜ぶと嬉しくなったり、相手が悲しいと自分も悲しい気持ちになるのは人間にもこの共認機能があるからである。一般に『心』と一般に言われるものの本質部分がこの共認機能にあると言っても良いだろう。
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(グルーミング:画像は朝日百科より)
ではなぜ共認機能によって知能が発達するのか?
サルの脳を一般動物の脳と比べた場合著しい違いが見られる。まずサルの脳は前頭葉にある連合野が著しく発達している。大脳の各部位は感覚機能や身体各部位の運動機能などある程度専門領域に分化しているが、サルの脳には、これらの各部位を繋ぐ太い神経網が縦横に張り巡らされており、それらはこの前頭葉連合野に集約されている。このことはこの連合野こそが、サルの脳の統合機能(総合判断機能)であることを示している。この連合野(≒共認機能)の獲得によって知能が著しく発達した事がわかる。
同類闘争の特徴は他動物との争いと違い、本能的には力の差が無いため、僅かの差で勝負が決定される点にある。
だからこそより膨大な情報を処理判断し、総合判断に上回ること事が不可欠であったのだろう。そしてこの判断の軸をなしているものこそが、仲間の表情や仕草の微妙な差を読み取り、それを羅針盤としてゆく評価共認の機能なのである。縦横に走るネットワーク神経や連合野はそのためにこそ必要となったのだ。
一般動物は本能(と学習行動)によって行動様式の大部分が規定されており、行動様式の組み換えにはDNAの変換を擁する。ところがサルは共認機能を獲得することにより、仲間の評価(表情やしぐさ)を羅針盤にして集団の共認内容(課題や規範、役割)を最適なものに組み替えることにより、行動様式を短期間で転換させることが可能となった。だからこそ、集団毎の固有の文化も形成される。共認内容の組み替えは仲間の評価を羅針盤としており、その意味でサルのもつ最先端の共認機能の中でも、この評価共認機能こそが最先端機能である言えるのである。
また、この評価共認機能が最先端機能であるが故に、仲間の表情や仕草をより十全に読み取るため、サルは上半身を直立させ、顔から体毛を無くし、顔の表情筋をより発達させるなど、本能機能の組み換えさえも行っている。
これが、評価共認機能が、全ての本能を自らの下に収束させた統合機能となっているという引用文の意味するところである。
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(顔に毛がない:画像は朝日百科より)
しかし、重要なのは圧力源である。同類闘争の圧力は、他集団さえ居れば、必ず発生する。そして、猿類・人類は、この圧力を進化の源泉としてきた。従って、同類闘争の圧力こそ、人類の永遠の圧力源=活力源だと云えるだろう。
この点(同類闘争を圧力源にしているという点)は、次代の社会統合の仕組みを考える上で、決して忘れてはならない基礎条件である。
超国家・超市場論4同類闘争の圧力と共認統合の限界 [2]より引用
同類集団同士の闘いを行っているのは人類と猿類だけである。サルの場合は、同類闘争に対応するため共認機能を形成し著しく知能を発達させ、その共認機能の下に本能を組み替るなど著しい進化を遂げてきた。そしてその共認機能はわれわれ人類にも引き継がれている。
同類闘争は人類の場合、例えば土地をめぐる戦争や利益をめぐる企業間競争や評価をめぐる学術活動や社会活動など様々なものが幅広く存在する。
重要なことは、置かれた環境を取り巻く圧力によってこの同類闘争の目的や中身が大きく異なってくることである。
歴史的に言えば1970年ごろまでは生存圧力(に基づく同類闘争)こそが、人類にとっての主要な圧力であった。だからこそ戦争や利益競争が主要な課題となってきた。しかし生存圧力が衰弱した現在から近未来にかけては、周り(仲間や社会)の期待に応えて、共認充足を得ることに大きく変わっていくことが予測される。
しかし、先を急ぐ前に、もう少し人類の歴史に立ち戻ろう。次回は引き続いて人類集団、取り分け人類の原点をなす原始時代(初期人類)の集団や社会について詳しく見ていきたい。
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(温泉に入るサル:画像は朝日百科より)
シリーズ『超国家・超市場論』いままでの記事一覧
シリーズ『超国家・超市場論』第1回 新しいまつり場は、国家と市場を超えられるか? [11]
シリーズ『超国家・超市場論』第2回 生命進化のダイナミズム [12]
シリーズ『超国家・超市場論』第3回 『国家と市場は、外圧に対する適応原理が全く異質な存在である』 ~闘争(能力)適応と共生(取引)適応~ [13]
シリーズ『超国家・超市場論』 第4回 『圧力が統合機構の中身を規定する』~置かれた環境を貫く 闘争圧力を把握せよ~ [14]