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庶民による社会統合気運の高まり その最先端の潮流を探る5 ~名古屋市・地域委員会の可能性とは?~

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画像はこちら [1]からお借りしました。
 
’10年参院選の投開票7月11日に行われ、民主も自民も’07年参院選より得票数を減らした。
今回の結果から見える民意は、「脱民主・脱自民→官僚主導型政治へのNo」であったとも言える。
 
’10年参院選 民主も自民も票を減らした/結果を大きく左右する10%の浮動層 [2]
 
ただ、国政において、“選挙”だけでなく“政策”に民意を反映していくには、まだまだ道のりは遠い。
しかし、地方においてはその試みが始まっている。
 
今回は、民意を政策に反映していく試みとして設立された名古屋市の「地域委員会」についてみていく。
 


◆地域委員会とは?
 
はじめに、名古屋市の地域委員会の概略を紹介しておきたい。
 

 地域委員会とは、地域の課題を解決するために投票で選ばれた委員を中心に市の予算の一部の使い道を決める、住民自治の新しい仕組みである。昨年末の市議会で8つのモデル地域での先行実施が認められた。地域委員は公募と推薦の2種類からなり、いずれも投票で選ばれる(公募は選挙、推薦は信任投票)。
 任期は2年で2期まで。報酬はなく、交通費などの実費弁償として月額2000円程度が支給されるだけ。地域のボランティア議員である。8つのモデル地域の委員定数(7人から11人)は人口比によって決められ、公募委員の総数は40人。推薦委員の総数は32人となっている。今回、公募委員に64人が立候補し、倍率は1・6倍。
 公募・推薦委員の立候補者による選挙活動が2月22日まで行われ、8地域で公開討論会が開催された。選挙は、事前登録した18歳以上の地域住民による郵便投票方式で、締め切りは26日。翌27日に開票され、3月中に地域委員会は正式スタートする。昨年4月の市長選の公約がモデル地域限定とはいえ、早くも実現する運びとなっているのである。
「楽しみにしてちょうよ! 河村“どえりゃー”庶民革命の申し子 無報酬議員が職業議員の特権を奪う日」 [3] ダイヤモンド・オンラインより

  
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図は「地域委員会の創設に向けて」名古屋市 [4] よりお借りしました
 
 
◆地域委員会に見る可能性
 
前項で紹介した資料にあるように、地域委員会の特色として掲げられているのは、大きくは下記の3点である。
地域住民による委員選出
地域の課題解決策の議論
地域予算の決定(承認は市議会)
 
現状では、既存の地域団体との役割分担調整、準備期間の短さ、委員の責任や権限が不鮮明といった問題があり、まだまだ軌道には乗っていないようである。
 
ただ、開催されたいくつかの地域委員会の報告を読むと、財源・権限の移譲の前段階として必要な“共認形成の場”としての新しい可能性が感じられる。
 

 ここで議論を切り開いていったのが、聴衆の女性の発言である。いわく、地域委員がつくられた本来の目的は予算の決定ではなく、少子高齢化の中での地域住民のつながりの再構築であったはずであり、これが周知されていないことが問題である。前回はもっとわくわくした雰囲気があったのに、今回のこの寂しさはどうしたことか、という正当な指摘である。それに対し、T氏は「理想論にすぎない」と切り捨てたが、ここで年長者の出番が来る。S氏は今後の改善点はあるが、一度走り始めて一生懸命やってきたのだから、市民と一緒に行動し、問題点が出たら話し合うという形で成功させたい、T氏は責任感が強すぎると述べ、N氏も問題点は私たちにではなく制度の側にあるのだから、私たちは今ある状況の中で、任期までは頑張るべきだと発言した。聴衆女性も、今日の会合はお通夜のようだ、もうスタートラインに立っている以上、委員は責任問題よりも自ら率先して盛り上げることを考えてほしい、参加者も徐々に減少している、舞台裏を見せるな、と発言した。これに対し、T氏からは市民の皆さんには舞台裏を見る責任があるという反論が出され、他の聴衆女性も、確かに逡巡から出来上がることもある以上、確立していない事柄から始めるのもよい、暗い会であっても後から振り返って必要であったとなるなら、それでよいではないか、という意見を出した。この辺りの議論が、今回の審議の白眉であったろう。
~後略~
「第7回田代学区地域委員会2」 [5]望月秀人のウェブログより

※引用元では人物は実名→本記事でイニシャル表記に変更
 
新しい組織を作って、そこに財源と権限を移譲するだけでは、(たとえ委員がボランティアでも)別の特権組織ができるだけになる危険性もある。
 
名古屋市の地域委員会は、議論の場には地域委員以外の住民も当事者として参加し、かつ発言が可能である。
紹介した会合では、住民席からの意見が議論を進展させている。
 
このようにして、住民の意思が酌み取られる場があり、政策決定・予算決定に反映されていけば、地域委員会の会合以外の日常でも、住民によって自然発生的に草の根の共認形成の場が作られていく可能性が高い。
 
もちろん、参加住民の少なさや、対面の場の人数限界といった諸問題は、まだまだ山積みであろう。
しかし、それらは、周知期間の確保や、インターネットの活用法を検討することで突破口を見いだすことは可能である。
 
 
みんなにとって何が必要かを共認し、そのために使うお金もみんなで決めていく。
住民発で共認形成の場が作り出され、日常においても機能していけば、みんなが常に政治に携わっていくことになる。
このような仕組みを軌道に乗せれば、社会統合は、特権階級が独占するものから、住民達が半専任のローテーション制で、自ら担っていくものへと転換させられるのではないだろうか。
 
 
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