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西欧発近代市場と江戸時代・日本の市場の違い

十字軍遠征以降、西欧で急拡大した「市場」と、江戸時代に日本で急拡大した「市場」。文化文芸の発展、消費階級の拡大など共通点は多いものの、根本的に違うもののようにも思えます。
欧州市場の拡大(≒商人階級の拡大)は、十字軍遠征と共に始まりました。
■欧州発近代市場の登場と拡大
キリスト教の広がり、権力化
  ↓
十字軍遠征(200年にわたる持続的な市場拡大)
  ↓
商人権力の拡大  ・・・→<ルネサンス>
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 |   | ・・・・<大航海>  |
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 |  免罪符の発行   |   |
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 |  宗教改革      |   |
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 |  教会権威の失墜  |   |
 ↓   ↓         ↓   ↓
【 市場拡大というパラダイムが絶対化 】
  ↓
近代思想の登場(ex.デカルト)
  ↓
イギリス中央銀行  ・・・→大英帝国の確立
(イングランド銀行)           |
  ↓                   ↓
近代民主主義国家の誕生 --→帝国主義
 (ex.フランス革命、アメリカ独立革命)

十字軍遠征~大航海時代~帝国主義時代を通じて西欧市場の拡大に寄与したのは、『戦争による略奪』でした。略奪対象がイスラム→アメリカ→アジアと拡大し、略奪だけでも約700年にわたる持続的な市場拡大が実現しました。


・略奪による富の集積
・その富を消費する階級の存在
・支配階級の消費を支える都市住民の登場
・私権拡大を正当化する思想の登場

こうして「市場拡大というパラダイムが絶対化」していきます。
■日本の江戸時代の市場拡大と、どこが違うのか?
西欧列強が、他民族・他地域を侵略・略奪する中で市場拡大を実現していった時代、江戸時代の日本でも首都・江戸を中心に市場が拡大していきます。
海外への侵略・略奪がほとんどなかった日本で、市場が拡大したのは、なぜか?
参勤交代があったからです。
参勤交代とは、国元で1年を過ごし、次の1年は江戸で暮らすという大名の生活サイクルです。国元から離れ江戸で暮らす大名とその家臣たちの消費のための金は国元からの資金で賄われており、「純粋な消費者」として存在していました。しかも、各大名が江戸に集められていたことにより、大名間相互の相対意識が生まれ、「下手な生活はできない」という意識が生まれ、江戸での大名の暮らしは、贅沢を極めます。
つまり、参勤交代があったことにより、日本中の生産余剰分が「江戸」(及び大阪)という1箇所で消費されつくすという特異な構造にありました。
封建体制からゆるやかな中央集権体制へと移行しつつあった江戸・日本において、「富が集積」し、「それを消費する階級」が存在し、また参勤交代によって整えられた街道が流通路になり消費財が集中するという市場拡大のカタチを取りました。
江戸時代の参勤交代制と市場拡大 [1]
■西欧発近代市場と江戸時代の市場の違い
つまり西欧発近代市場と、日本・江戸時代の市場の違いは、「十字軍遠征→大航海→帝国主義と、他国からの侵略・略奪により富を集積した西欧」と「封建体制から中央集権体制への移行途上に登場した参勤交代という仕組みにより国内の富を集積した日本」の違いと言えます。
(ないとう)

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