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ちょっと変!?『地方分権』①国と地方の「財源」と「権限」の綱引きに過ぎない

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日本では少子高齢化、人口減少、財政難と社会構造の基礎が大きく転換しつつある。
それに伴って、これまでの「国ー都道府県ー地方自治体という行政体制」も変わっていくことが避けられない状況にあります。
そこで、行政体制の基本的な方向性となっている『地方分権』について考えてみます。
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『地方分権』の論議は、過去より、また、国、地方、財界などそれぞれの立場からの様々な主張があり(参考:金貸しは、国家を相手に金を貸す「地方分権の歴史」 [2] )、
百花繚乱の様相を呈しているように見えるが、大きく捉えると、
・地方の権利主張としての『地方分権』』
・市場拡大の方策としての『地方分権』
・行財政改革の方策としての『地方分権』
というロジックで展開されてきた。
ところが、既に権利主張だけで通用する社会ではなくなっており、また、世界的な市場縮小の時代に入ったことが明確になり、権利主張のため、あるいは市場拡大のための『地方分権』の主張は衰退していくことが予想され、行財政改革のための地方分権という議論に収斂していくと考えられる。
そして、「行財政改革」の観点で地方分権を捉えるとき、大きくは、中央集権志向の「国(官僚)」と国に反旗を翻す「地方」が【財源】と【権限】を巡って綱引きをしているという構図が見えてくる。
詳細を見てみたい。
 
 ●法律によって『地方分権』が前提条件になった
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この図表は、近年の地方分権改革の主な経緯である。その中で、大きな転機となったのは平成12年の「地方分権一括法」である。
主な内容は、①機関委任事務制度の廃止 ②必置規制の緩和 など、国と地方が対等という原則の下、役割分担を整理すると同時に、地方自治体運営に多少の自由度を与える内容になっているが、国の厳しい財政状況と官僚の抵抗もあって、財源と権限の移譲については道半ば、という状況である。
ここで注目すべきは、平成12年の「地方分権一括法」とその前の「地方分権推進法(平成7年)」という法律で地方分権推進が位置付けられており、政治・行政の世界では地方分権が既定路線になったという点だろう。
だから、地方分権に抵抗していた国(官僚)もそれに異を唱えることはできなくなり、政治も行政も財界も地方分権を前提とした論議となり、対立点が不鮮明となり、地方分権の論議を分かりにくいものにしているのである。
 
 ●国(官僚)主導で進められてきた地方分権
ところが、国(官僚)は地方分権の名の下に着々と権益の維持を指向してきた。
【平成の市町村合併】
平成12年以降、アメとしての合併特例債とムチとしての地方交付税の削減を地方分権一括法に盛り込むことで、平成の市町村合併を急速に進め、平成11年3月末に3,232あった市町村の数は、約1700と概ね半減した。
これにより、国の財源が減少するなかでも、地方に対する財源分配機能を維持し、力の源泉を維持しようとしたのである。
【道州制】
同様に、都道府県に対しては、道州制をぶち上げ、府県の合併を推進し、都道府県が持っていた権限を基礎自治体および道州に分割、道州の行政業務を国の広域ブロック行政と重ねることで国(官僚)の権益を拡大しようとした。
全国知事会からは猛烈な反対を受け、現在は膠着状態だが、国はあの手この手で道州制の浸透を図るとともに具体的な意向準備を進めていたようである。

・国土交通省の国土形成計画では、地方ブロック単位での独自の国際交流や、特色ある地域形成を目指す内容を盛り込む事により、地方ブロックを道州に見立てた計画として、道州制のイメージの理解に努めたりしている。また、議論の叩き台として、11道州案や国土形成計画を用いた具体的な調査検討に入るなど、道州制を定着させるための様々な策を講じている。
・国が各省庁の主要出先機関をさいたま新都心に移転させたことにより、北関東州の州都をさいたま市におくことによって、背後から国が北関東州を治めることを狙っているのではないか、との思惑がある。
Wikipediaより  [3]

【定住自立圏構想】
そして、自民党政権の終盤の平成20年に提起されたのが定住自立圏構想である。
これは、人口5万人以上の「中心市」と周辺市町村が協定を結び、圏域として定住、自立、発展を目指すもので、病院やショッピングセンターなど都市機能を中心市が整備し、自然環境や食料生産などを周辺市町村が担い、互いに連携しながら圏域としての利便性を高める、とされているが、市町村をさらに括った上で、都道府県の権限を移譲しようとするもので、都道府県の権限を骨抜きにし、簡単には進まない道州制への移行を容易にすることが目標になっていると考えられる。
 
 
ここで、先日発足した民主党の地方分権施策を見てみたい。
 
 ●民主党案の原点は小沢一郎『日本改造計画』の「国ー300自治体」の統合体制
民主党マニフェスト [4]で地方分権についての内容を要約すると次のようになる。

・地方分権は推進する。そのため、国の役割を大幅に限定して事務事業の多くを地方へ移譲するという観点から事務事業の見直しを集中的に行う。
・住民に一番身近な基礎的自治体を重視した分権改革を推進し、中央集権制度を抜本的に改め、地域主権国家を樹立する。
・地域主権国家の母体は基礎的自治体(現在の市町村)とし、基礎的自治体が担えない事務事業は広域自治体が担い、広域自治体が担えない事務事業は国が担う、という「補完性の原理」に基づいて改革を進める。
(例えば、人口30万人程度の基礎的自治体に対しては、現在の政令指定都市と同等レベルの事務権限を移譲する。)
・国の役割は、外交、防衛、危機管理、治安、食料・エネルギーを含む総合的な安全保障、教育・社会保障の最終責任、通貨、市場経済の確立、国家的大規模プロジェクトなどに限定する。
当分の間、現行の都道府県の枠組みを基本とするが、基礎的自治体の規模や能力の拡大、広域自治体の役割の整理をさらに図り、将来的には、多様性のある基礎的自治体を重視した地域主権国家を目指す。

このベースになっているのは、都道府県を廃止して300の基礎自治体と国の2段階で国ー地方を統合することを掲げている小沢一郎の『日本改造計画』である。
その意味で、自民党が推進しようとしていた道州制は、民主党政権では鳴りを潜める可能性が高い。
ところが、どの政党が政権を取ろうが、また、当事者である市町村長会、全国知事会から異論がでようが、地方分権の論議は突き詰めると【財源】と【権限】の綱引きでしかない。
次の投稿で、それらの議論に欠けているものを明らかにしていきます。

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