
写真はUAW(全米自動車労組)の会社との契約書
米産業の象徴であった自動車業界においてGMとクライスラーが経営破綻しましたが、米では労働組合が非常に大きな力を持っており、中でも全米自動車労組(UAW)は日本では考えられないような特権を有し、その既得権を維持し続けてきたことが経営破綻の大きな要因となっていたようです。
経営側の圧力に何とか対抗するために組合を組織して自衛する、というのが労働組合のイメージでしたが、UAWはなぜ経営側に対し特権を持つことができたのでしょうか。
2回に分けてお送りします。
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先ずは、全米自動車労組(UAW)の特権の実態です。
●中岡望の目からウロコのアメリカ
『GM倒産の危機の構造:なぜアメリカの自動車業界は破綻しつつあるのか』 [1]からの引用です。
(中略)
【アメリカの自動車業界の構造問題】
(中略)
具体的には医療補助や年金制度などを積極的に充実させていきます。なおアメリカの労働組合と日本の労働組合は組織形態が基本的に違います。日本企業では労働組合は企業内組合で、それぞれが独立しています。しかし、アメリカでは産業別組合が普通で、自動車産業の場合、全米自動車労組(UAW)に工場別に所属します。
(中略)
その結果、アメリカの自動車会社の労働賃金は極めて高くなっています。ある調査はビッグスリーの1時当たりの報酬(医療保険や年金、諸手当などのコストを含めたもの)は73・20ドルであると推計しています。トヨタ自動車の場合、その額は48ドルです。他の産業の専門職の場合は47・57ドル、製造業の労働者の場合31・59ドル、全産業で28・48ドルです。この数時から分かるように、アメリカでは自動車メーカーの賃金は圧倒的に高いのです。これはGMなどが特殊な制度を持っているからです。たとえば医療保険にかかる費用は自動車会社が負担していますが、退職後も家族も含めて医療保険が適用できるシステムになっています。アメリカでは医療費は日本では信じられないくらい高いのです。年金も他産業に比べると手厚くなっています。もうひとつ自動車業界特有のシステムがあります。自動車メーカーが合理化などによってレイオフした労働者は“ジョブ・バンク(job bank)”という制度が適用され、働いていたときと同じ賃金が保障されるのです。
(中略)
●全米自動車労組、悪名高き“特別待遇”に決別 [2]
David Welch (BusinessWeek誌、デトロイト支局長)からの引用です。
(中略)
11月の米議会公聴会での批判を受け、ビッグスリー(米自動車大手3社)首脳陣は高コストな社用機の利用を取りやめた。それに呼応して全米自動車労組(UAW)も、会社存亡を左右する政府支援の確保に向け、首脳陣が再びワシントンに出向く前夜の12月3日、高コストな“特別待遇”を自ら手放すことで合意した。
その特別待遇とは、世間の批判を浴びている「ジョブズ・バンク」制度だ。ビッグスリーとUAWが数十年前に合意した労働協約で導入された制度で、レイオフ(一時解雇)期間中も組合員に賃金の85%を保障する。組合員の中には、会議室で仕事を待ったり公園の清掃に回されたりする日々を何年間も続けた者もいる。その間もずっと賃金に近い額が支払われていたのだ。
UAWは、ビッグスリーが組合健保基金への拠出を先延ばしすることにも同意した。この基金はUAWが運営主体となり組合員への医療給付を行うもので、2010年に運営が開始される。
米ゼネラル・モーターズ(GM)、米フォード・モーター(F)、米クライスラーにとって、ジョブズ・バンクは様々な面で負担の大きい制度だった。労務費が固定化されることで、生産戦略にも影響が生じた。過去10年間ほぼ一貫して、ビッグスリーは減産するより販売店へのリベート(販売奨励金)を増やして店頭価格を引き下げる方針を採った。減産したところで賃金負担は変わらないからだ。
(中略)
では、なぜこのような特権を全米自動車労組(UAW)が手にすることが出来たのでしょうか。 (続く)