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ベトナムの可能性

前回の記事「中国プラスワンとしてのベトナムの実情 [1]」にも書かれていたように、
ベトナムへ進出している日本企業の評価として、安価で優秀な労働力や対日感情が良好という魅力がある反面、インフラの未整備や裾野産業が未発達、などの課題があることがわかってきました。
そして、近年では徐々に人件費も高騰し始めており生産拠点としての経済的な優位性が低下しつつあります。しかし、ベトナム滞在経験がある人の記事で紹介されていた「日本人が高度成長で失ってしまったものをベトナム人は持っているような気がします」という感想の中に、将来の日本とベトナムの可能性が秘められているように思います。
先進国の中でいち早く豊かさを実現した日本は今、次代の目標を見失っています。しかし、若者を中心に、欧米の価値観(市場原理、個人主義)に代わって私権時代に失われた本源的な価値観(仲間第一、みんなの役に立ちたい)を再生していく新しい動きが出始めています。
ベトナムは将来、欧米化していくのか。あるいは独自の路線を歩んでいくのか。その時、日本の役割は何か。非常に難問ですが、その可能性を探ってみようと思います。

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1.一昔前の日本に近い? ベトナムのビジネス作法
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【引用先】アジア投資ウォッチング 第4回 アジア異文化ビジネスにおける心構え
~ ベトナムの事例 vol.1~
 
特に、「人間関係重視」や「序列主義の傾向」は一昔前の日本企業に酷似しています。
(参考)「値切りの文化」について
ベトナムは「バオニュー(いくら?)」の国です。東南アジアの人々の決まり文句が「ノープロブレム(問題ない)」「ネバーマインド(気にしない)」であるのに対し、ベトナムだけは事情が異なります。「コンサーオ(問題ない)」ではなく、「バオニュー?(いくら?)」なのです。ベトナム庶民の生活は、「ぼるか、ぼられるか」、日々是決戦なのです。
2.ベトナム社会の概要
ベトナム型ビジネス手法の背景を知るために、ベトナム社会の概要を紹介します。日本との類似点や接点と相違点を考える上でポイントとなりそうな点を列挙します。
・ベトナムはインドシナ半島東岸にある南北に細長い国家
・歴史的に北方の中国は常に潜在的脅威であり、1979年の中越戦争の記憶も生々しく国民感情としては中国に厳しいものを持っている。一方、親日度はタイと同じく非常に強い国
・ベトナムの人口は約8500万人でタイの6800万人を上回る。人口動態では20代以下が全人口の半分以上を占める。「老年社会」日本と全く逆の「若年社会」。
・中国以上に儒教文化の影響が強く、(中国と同様に)男子の子供を望む傾向が強いようです。つまり、ベトナムは中国以上の「儒教文化圏」。ベトナムは位置的には「東南アジア」なのですが、文化的には「東アジア」とも云える。
民族構成は、単一民族で、キン族が人口の85~90%を占めている。首都は北の政治の中心街・ハノイ。最大都市はメコンデルタのビジネスの中心街・ホーチミン市。
・ベトナムの通貨は「ドン」。これは日本の銅銭・寛永通宝が材質の良さから東アジアの機軸通貨の1つとして流通していた時の「銅銭」を意味するベトナム語「ドンティエン」に由来すると言われている。
政治的にはベトナム共産党の一党独裁で、かつての友好国・ソ連の官僚組織に似た大きな官僚機構を抱えていまる。(かつて、ベトナムはソ連の衛星国でこの時期にタイ経済とベトナム経済では大きな差がついてしまいました)。 その結果、外資がベトナムに進出をする場合には、複雑な手続きが必要など、大きな官僚組織が障害(?)になっている。
・過去数年間の成人識字率も80~97%と高い水準を保っていて、労働賃金が低い一方で識字率が高いことが、ベトナムが魅力的な投資先と見られている一因。
【引用先】 タイ在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ 簡単に「ベトナムについて」  [2]
【その他、主要な統計データ】CBSビジネス豆知識 ベトナム情報 [3] 
3.ベトナム人の特徴
ある研究所が報告した、ベトナム人の特徴を具体的に紹介します。
(現代の日本人に似ている点も多いです)

【ベトナム人の特徴10項目】
   1.勤勉だが、すぐに満足する
   2.頭脳明晰、創造的だが、長期的ビジョンがない
   3.器用だが、持続性がない(完璧性を気にしない)
   4.実用的だが、非理論的
   5.勤勉、頭脳明晰だが、最後までは習得せず、知識がばらばら

   6.接待好き、接待志向が強い
   7.節約するが、くだらない目的(面子など)で無駄使いも多い
   8.困まると団結するが、余裕があると個人主義
   9.平和好きで、我慢もできるが、くだらない理由で勝負し、大局をなくすことも
  10.集いが好きだが、連結性が低く、非協力的
【引用先】ブルーチップ ベトナム投資ニュース ベトナム人の特徴10項目 [4]
これらの特徴の背景に、共産主義国家という体制の弊害があるようです。
要は、真面目に仕事をしても真っ当に評価されないので、それ以上の事はしない。
ここでは、「課題共認の弱さ」や「みんなの期待圧力の弱さ」という課題が見えてきます。

4.中国プラスワンからベトナム・プラスアルファへ
日本はベトナムにとって最大の政府開発援助国(ODA)です。従来の日本企業だけが潤うお金の使い方を改め、ベトナムにとって役に立つ支援金の使い方に転換するべきです。
これまでベトナムに進出した日本企業は、中国プラスワンという安価な労働力に着目した輸出加工業が中心でした。しかし、それ以外の分野にも投資して底辺からお互いに支え合う必要があるのではないでしょうか。
目先のリスクヘッジ(中国リスク)ではなく市場原理を超えた戦略パートナー国として、将来ほかの東南アジア諸国をも巻き込んでいくような新たな関係構築を図っていく戦略が求められています。
例えば、教育、農業、企業の人材育成などの分野が考えられます。
識字率も高く教育熱心なベトナムですが、「何のために勉強するのか?」という課題を共有できるのではないでしょうか。日本の学校教育も同様の課題を抱えています。
農業分野では、世界第二位のコメ輸出国であるベトナムと食糧自給率40%の日本とでは相互補完の関係が構築できそうです。日本の農業技術の移転と同時に、日本自身が農業や食糧の重要性を再認識する良い機会となります。
企業の人材育成では、共産主義の弊害や序列主義を取り除き、「みんなの役に立つ仕事とは?」「仕事で充足するには?」などの活力再生事業に可能性があります。これも日本企業が抱える共通の課題です。
逆に、日本はベトナムから学ぶ点があります。それは、「外交力」です。
ベトナムは、中国に占領されフランスからも占有され、米ソの代理戦争で国が二分されました。過去の経験から大国のエゴには敏感であり、面従腹背の極めてしたたかな外交力を身につけています。アメリカべったりの日本が見習うべき点だと思います。
以上のように、日本は大国意識を捨てて相手国の期待を掴み、共通の課題を共有しながら持続可能な相互補完関係を構築していくべきではないでしょうか。中国プラスワンではなく、ベトナム・プラスアルファの視点が重要だと思います。

他にも重要な視点があると思われます
みなさんのご意見を聞かせてください 😀 😀 😀
(hassy)
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