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中国のエネルギー戦略(東南アジアでの資源争奪戦)

gazou.bmp
写真は海底油田採取現場。(C)プレシアン
日刊ベリタ [1]より借用しました
東シナ海の日中中間線付近にある春暁ガス田(日本名:白樺ガス田)の開発にあたって、中国側の単独掘削が問題となっているように、中国の資源獲得への激しい競争は近年ますます増しています。
春暁ガス田のような強引な手法からは、「中国側のアセリ」を感じますが、それ以外の事例や中国国内の状況、しいては中国の戦略については勉強不足で、意外と知らないことに気付きます。
そこで、今回のブログ記事では、資源獲得に関する中国の国家戦略を調べてみました。
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1.中国の資源獲得戦略について
まず、最初に「中国政府のエネルギー国際戦略」について、「石油/天然ガス レビュー」より以下の文章を引用します。
 2002年に入って半年足らずで、中国のNational Oil Company(NOC)1が1,400億円以上の国外上流石油資産の買収を行なっていることをご存知だろうか。
 中国は何事においても二つの顔を使いわけて行動している。政治については共産党一党独裁を、経済についてはグローバル化・市場化を追求しており、その両面において国際社会で強固な地位を確立しようとしている。特に経済については、2001年11月のWTO加盟が象徴しているように、外国企業への市場開放並びに中国企業の国外進出を奨励している。
 NOCが近年積極的な国際展開を実施していることも、この中国の国策に沿ったものである。中国政府は石油の準輸入国となった1990年代後半から「資源外交」を活発に行なっており、NOCの国際展開を積極的に支援しているように見えるが、それは中国が世界に政治、経済的な拠点を築くために行なっている手段の一つであり、副産物でもある。政府はNOCに対し、「エネルギーの安定供給のため国外資源の確保」を求めるとしているが、その実「国外生産原油の国内持ち込み」よりも「外貨の獲得」や「国際社会における中国の国威発揚」を求めている。 中国は2050年までにアメリカに政治的、経済的に追い付くことを至上命題としている。中東、ロシア・中央アジア地域や米国の制裁対象国(スーダン)等への接近は、資源外交の観点からは「産油国との協力関係強化」であるが、政治的、経済的には「隙間(ニッチ)戦略」であり、米国を牽制することを意識した行動であると解釈される。
○『中国国有石油企業、怒涛の国外進出』 [2] (石油/天然ガス レビュー’02・7)
ここで、要点をまとめてみると、
①現在中国は資源、とりわけ石油の純輸入国(1993年より)→「不足するエネルギーの確保」のために国有企業による買収戦略を展開
②政治的・経済的には、「対米国」を意識した「国際社会における中国の影響力を高める」ことを目的としている
の二点に集約される。
そして、①の「エネルギー確保」、②の「親中国家の囲い込み→米国への牽制」のために中国が選んだ戦略が、
『米国の制裁対象国≒軍事政権国家』、
『米国の手が届きにくい国々≒親ロ・反米国家』、との資源協力関係強化、

つまり「隙間(ニッチ)戦略」である。
中国が資源外交を展開する国々の中でも、とりわけスーダン・アンゴラなどのアフリカ軍事政権国家、ベネズエラ・エクアドルなどの反米国家への接近はこの戦略に基づくことがわかる。
中国は米国を出し抜き世界の覇権を握ることを資源戦略で一貫して行なっているのだ。
2.東南アジアでの資源戦略とその末路
それでは、本ブログで追求している東南アジア諸国においてはどうだろうか?
東南アジアにおいて米国が経済制裁を行なっている国といえば、ミャンマーが挙げられる。
本ブログの2009年3月17日の記事 [3]でも紹介したように、ミャンマーは、20年来の軍事政権国家であり、中国への30年間で1800億立方キロメートルの天然ガスの供給を約束している親中国家。
やはり、世界(≒アメリカ)の傍流を歩く孤立した国家を相手に協力関係を結んでいる。(ミャンマーのケースでは、陸路の資源輸入経路を確保できる地政学的なメリットも大きい)
中国への天然ガスの提供とその見返りとして軍事兵器の購入。
お互いの利害は一致しているが、孤立するミャンマーの中国への依存度は高まるばかりで、その関係は明らかに中国の方が上。ミャンマーの属国化が進んでしまっている。
そして、その末路が以下の反中デモや環境破壊である。

○『ミャンマーで広がる反中機運』 [4](中南海ノ黄昏07.10.15)
○『中国の違法伐採で消滅の危機に直面するミャンマーの森林』 [5](GreenPost -Heuristic Life 07.10.16)
超大国を目指し、豊富な資金で買収を重ねる中国国営企業の勢いはもはや止められないのだろうか?
最後に、同様に中国への輸出依存が進み、自国の資源が高騰していたオーストラリアの対中政策の変化を取り上げたいと思う。
中国向けで鉄鉱石や石油を輸出するオーストラリアでは、最近、Swan財務大臣が中国の買収案件に対して、以下の政府規制を声明した。
豪州政府は「資源に対する投資家が資源の買い手である場合は取り分け注意深く検討し」、されに「資源の需要家が既存の生産会社のコントロールを取得するような買収提案を行なう場合はより慎重に検討する」
○『豪州資源分野への中国の投資動向とその戦略について』( [6]金属資源レポート2009.3)
オーストラリアはこれまで中国側の思い通りだった形勢に新しい国際世論の構築を模索し始めている。
孤立国家→中国依存のミャンマーにおいて状況を改善させることはたしかに困難ではあるが、東南アジア諸国にとってミャンマーの事例は決して対岸の火事でない。
ニッチ戦略→世界覇権を推進する中国への対応は今後の東南アジア全体の課題であると言えるだろう。

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