- 日本を守るのに右も左もない - http://blog.nihon-syakai.net/blog -

『近代国家成立の歴史』まとめ3 近代国家の理論的根拠の成立、そしてアメリカ独立革命へ

[1]


■一人一人が市場と契約する理論=社会契約論
10 近代国家の理論的根拠=社会契約説とは、何だったのか? [2]
11 国家と個人を直接結びつけたホッブス [3]
12 個人の「所有権」を最大限認めたロック [4]
13 私権社会を全的に否定できなかったルソー [5]
14 そして、市場拡大を第一とする国家理論が出来上がった [6]
支配観念であったキリスト教が宗教改革によって力を失い、また議会が国家の頂点に君臨する立憲君主制が誕生した結果、新しい国家理論が求められ始めます。
宗教改革は、それまでのキリスト教による序列統合を崩壊させ、神からの”救い”を私権追求の動機とした為、無制限の私権獲得闘争が発生させることになります。しかし、そのままでは秩序化されず統合されません。そこで、あらたな秩序を形作るものとして登場したのが、「社会契約説」でした。
つまり、「力の序列原理に基づく武力支配国家」から「宗教を利用し序列統合された国家」、そして「市場拡大を前提とした商人国家」へと「国家」そのもののあり方が大きく変容してきたわけです。
「市場拡大を前提とした商人国家」とその隆盛をうけ、当時の思想家たち(ホッブズ、ロック、ルソー)は、既存の国家理論に変わる、新たな国家理論を模索します。

彼らが試みた国家理論の中心は、既存の国家が王権神授説に代表されるように神や古来からの慣習法に依拠していたことに対して、そういったものに一切依拠することなく新たな国家のあり方を説明することでした。
彼らは、個人と国家が「社会契約」することによって生まれる国家こそ、正しい国家のあり方であるとし、三者三様に社会契約説を打ち立てます。
一見まったく異なることを提示している理論のように思えますが、大きくとらえれば、ホッブス/ロック/ルソーが語っている社会契約説は、実は個人の有する「権利」をどこまで認めるかによって 差 があるだけだったのです。三者とも、個人の「権利=私権」の維持,拡大(≒市場拡大)を前提とした理論構成になっています。
つまり、彼らが提示した社会契約説とは、私権拡大が閉ざされた序列統合社会から脱するための、『 市場社会と契約する理論 』だったのです!
秩序を維持する為の”契約”の相手が”神”から”社会”に置き換わり、”神”との契約が私権追求の動機となります。このとき、貧困からの脱出欠乏は、観念上の”救い欠乏”と肉体的な”私権獲得”の両方に収束し、それまで以上の強い私権圧力を生み出し、市場拡大が続いていきます。
■私権獲得の可能性を最大限認める国家 アメリカ
「近代国家」を決定付けたアメリカ独立までの流れ [7]
15 市場拡大を第一とする国家アメリカ合衆国~独立戦争開始まで~ [8]
16 世論を背景としたアメリカ独立戦争 [9]
”世論”を作ることで実現したアメリカ独立 [10]
イギリスの植民地として西洋史に登場したアメリカですが、イギリスvsフランスのアメリカにおける領土戦争の勝者・イギリスによる重税に苦しめられます。この重税とイギリス本国による既得権益の剥奪により、アメリカ商人の反発が強まり、独立戦争が勃発します。
しかし、当初独立戦争に積極的に加担したのは一部の商人たちだけであったため、圧倒的な武力を持つイギリス本土軍にかなうはずもなく、次第に不利な戦況に追い込まれていきます。この戦況を打破する為に、彼らは『世論』を作り出すことで、独立に消極的だった商人をも取り込み、独立戦争に勝利することができました。
商人たちが積極的に世論形成に乗り出し、その世論を背景に、商人にとって都合のいい国家を作る時代に入っていたのです。現代まで続くマスコミの存在意義もここにあると言っていいでしょう。
■司法権が最大の力を持つ国家 アメリカ
17 司法権力社会アメリカ [11]
世論を形成することによって数の多数を実現したアメリカは、遂に独立を果たし、独立宣言が発布されます。この独立宣言の元になっていたのが、ロックによる社会契約説でした。そこでは、「生まれながらにして創造主によって認められた権利」として、所有権が存在することを明言しています。ここに、国民の私権拡大を最大限認めた国家・アメリカが誕生しました。
しかし、独立を果たした当時のアメリカは、13州それぞれが独立したような状態であったため、対ヨーロッパ通商において州と州との対立が激化していきます。つまり、州と州との間でも激しい私権闘争が繰り広げられることになります。
この私権闘争を止揚するためには、どちらが正しいのか決着を付ける機関=裁判所が必要となります。こうして、司法権が最大の力を持つ国家=アメリカが誕生しました。事前調整を廃し、各人の私権拡大を最大限認めた結果、事後調整の場としての司法が最大の力を持つに至ったのです。
■市場拡大を第一とする近代民主主義国家
18 新たな私権獲得の可能性「フランス革命」 [12]
・私権拡大を正当化する観念(「個人」「人権」概念)
・革命のための世論形成

この二つがアメリカ独立におけるキーワードですが、アメリカ独立革命に続いて発生したフランス革命も、「私権拡大を正当化する観念」(自由、平等)と「世論形成」によって成功した革命でした。アメリカ、フランスに続く『近代(民主主義)国家』も、このアメリカやフランスとほぼ同様の構造の中で独立し、近代(民主主義)国家として成立していきます。
こうして、人権を自明のものとする理念が認知され、私権拡大を最大限認め、市場拡大を第一とする近代国家が世界各地に登場していきます。
(つづく) 
ないとう@なんで屋でした [13]
※『近代国家成立の歴史』シリーズの過去ログです。
 『近代国家成立の歴史』1 はじめに ~市場拡大が第一の近代国家~ [14]
 『近代国家成立の歴史』2 国家と教会の結託 ~ローマ帝国を事例に検証する~ [15] 
 『近代国家成立の歴史』3 教会支配の拡大と金貸しの台頭 [16]
 『近代国家成立の歴史』4 教会と結託した金貸し支配の拡大~宗教改革~ [17]
 『近代国家成立の歴史』5 国家と新しい商人の台頭 ~宗教改革~大航海時代~ [18]
 『近代国家成立の歴史』6 自治権を獲得したオランダ商人 [19]
 『近代国家成立の歴史』7 商人が国家をつくる [20]
 『近代国家成立の歴史』8 オランダ商人が作った近代国家イギリス [21]
 『近代国家成立の歴史』9 金貸しが支配するイギリス帝国へ [22]
 『近代国家成立の歴史』10 近代国家の理論的根拠=社会契約説とは、何だったのか? [2]
 『近代国家成立の歴史』11 国家と個人を直接結びつけたホッブス [3]
 『近代国家成立の歴史』12 個人の「所有権」を最大限認めたロック [4]
 『近代国家成立の歴史』13 私権社会を全的に否定できなかったルソー [5]
 『近代国家成立の歴史』14 そして、市場拡大を第一とする国家理論が出来上がった [6]
 『近代国家成立の歴史』15 市場拡大を第一とする国家アメリカ合衆国~独立戦争開始まで~ [8]
 『近代国家成立の歴史』16 世論を背景としたアメリカ独立戦争 [9]
 『近代国家成立の歴史』17 司法権力社会アメリカ [11]
 『近代国家成立の歴史』18 新たな私権獲得の可能性「フランス革命」 [12]

[23] [24] [25]