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農業再生こそ最強の雇用対策

長年続いた減反政策を転換し食糧自給率を上げることは、食糧安保に止まらず、雇用対策・経済対策上も効用があるのではないか。
以下、『国際派日本人養成講座』「愛国心で経済再生」(伊勢雅臣氏) [1]からの引用。
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■日本のおかしな食糧事情■
日本は世界最大の食糧輸入国で、食糧自給率はカロリーベースで39パーセントと、主要先進国で最低の水準である。
その一方で、政府はコメの減反政策(作付面積を減らして生産量を抑える政策)を続け、今や減反面積は水田の約4割に達した。米作の生産性向上により供給が増える一方で、食生活の変化によりコメの消費量が減り、売れ残りが生じてきたためである。耕作放棄地も、この狭い国土で埼玉県に匹敵する面積となっている。
この状況は国民の大半がおかしいと感じている。95パーセントが食料の確保に不安を感じ、85パーセントの人が減反政策を見直すべき、と考えている。

■地域の共同体が農業を支える■
さて、この問題にも磯前教授の提案する「愛国心で経済再生」のアプローチが有効である。実際に各国でそのような運動が始まっている。
北イタリアで始まった「スローフード運動」は、現在100カ国以上に広がっている。ハンバーガーやフライドポテトのような「ファーストフード」が大量生産された輸入食材を使い、世界どこでも均一化された加工食品を提供するのに対して、「スローフード」は「郷土料理や質の高い食品を守る」「素材を提供する生産者を守る」「消費者全体に食の教育を進める」 といったテーマのもとに、「地方の食文化」を伝え残そうという活動である。
「農と自然の研究所」代表理事の宇根豊氏はドイツでのこんな体験を紹介している。
ある村ではリンゴをジュースに加工して付加価値を付けて販売していた。そのリンゴジュースが飛ぶように売れているのだそうだ。・・・町の人たちは「このリンゴジュースを買って飲まないと、あの村の美しい風景が荒れ果ててしまう」と言って買うのだそうである。・・・リンゴはリンゴだけでは育たない。
同様に米国でもCSA (Community Support Agriculture)という取り組みがある。「地域の共同体が農業を支える」という意味で、一年分の農産物の購入を事前に契約するなど地域の農業を消費者が支援し、環境保護と地域コミュニティーの維持を目指す活動である。
我が国でも「地域の産物を地域で消費しよう」という「地産地消」活動が広がっている。

■ごはん一杯で経済再生■
こうした郷土愛や祖国愛が、どれほどの経済再生効果を持つのか。
「ごはんを食べよう国民運動推進協議会」は、われわれが毎日ごはんをもう一杯多く食べるだけで次のような効果がある、という試算を発表している。食糧自給率が8%向上。
現在の農業就業者人口約300万人が、食糧自給率に比例して増大するとすれば、自給率の40%から48%への向上は、60万人分の仕事を生み出す。

昨今、話題になっている派遣労働者たちにも、豊かな就業機会を提供できる。そして若い人たちが高齢化が進む農村に入れば、地域の活性化も大きく進むだろう。

以上、木材と食料の自給率の問題を見てみたが、問題の発端は、安くて良いものであれば、どこから、どんな過程で生産されたものでもこだわりなく購入する消費者の自己本位の態度であった。
そうした消費者のニーズに応えるべく、企業は外国産の木材や食料を大量に買い付け、国内に供給した。それにより海外で環境破壊を起こしたり、輸入のための膨大なエネルギーのムダを発生させた。
同時に、価格競争力を持たない国内の農業・林業は廃れる一方となった。行き詰まった農家を助けるために、膨大な国家予算が投入されても、問題解決の兆しは一向に見えない。また荒れ果てた自然は水害などを引き起こし、災害対策のための税金投入も必要となる。
経済学においては、消費者も企業もそれぞれの利益を最大化する事を目標として自己本位に行動すると仮定するが、それは金額に現れない悪影響を自然や社会に与える場合が少なくない。そして現代の巨大な消費量・生産量は、地球環境や地域経済、国家財政すら破壊しかねないほどの影響力を持つ。
この袋小路から逃れるためには、まずは消費者や企業が自己本位の態度を改め、少しでも郷土愛、祖国愛、人類愛を込めて、消費や生産を行うことである。

世界大不況によって失業率が上昇し、雇用対策が緊急の課題となっているが、無駄な公共事業によって徒に財政赤字を膨らませるよりは、食糧自給率の上昇⇒農業の再生によって雇用を吸収する方が、はるかに社会に寄与する。
それを実現するための条件がある。農業、その生産も消費も市場原理に委ねてはならないということだ。市場原理に委ねる限り農業は衰退する一方である。伊勢雅臣氏は「郷土愛、祖国愛、人類愛」という概念を使っているが、「地域の共同体が農業を支える」や「地産地消」とは、地域や社会にとって何が必要かという共認に基づいて農業を支えることであある。つまり、共認原理による農業の振興である。そして、それを精神論で終わらせないためにも、社会制度の転換が不可欠である。
『るいネット』に「『わら一本の革命』 ③原点を忘れた日本の農政」 [2]という投稿があるが、戦後の日本の農政は一貫して農業人口を減らす一方であった。その結果、農林水産業人口は300万人にまで落ち込んでいるが、今や反転すべきである。それが国益にも世論の流れにも適った道である。
その転換によって、雇用創出効果がどれくらいあるか?
農林水産業人口は’80年約600万人強、’70年1000万人強、’60年1400万人強である。当時より農業生産性が上がっているとは言え、就農人口を増やすという政策転換さえできれば、100万人単位での雇用創出が可能ではないだろうか。
(本郷猛)
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