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3段構えの米金融恐慌対策(RTC→RFC→IMF?)

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FRBが目論むアメリカの金融恐慌対策を予測してみる。
今回のアメリカ発金融恐慌対策のFRBの救済策は3段階で構成されているのではないか。
まず、今回の金融安定化法案に盛り込まれていたであろう1980年代のRTC(整理信託公社)現代版、次に1930年代のRFC(金融復興公社)の現代版、そして最後に国際通貨基金IMFの登場である。
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「東洋経済」2008年10月4日号の記事「不良債権買取機構は悠長すぎる 現代版RFC設立で過小資本を解決せよ」(シニアライター:浪川 攻氏)から引用する。

米政府は、最大7000億ドルの資金を投じて不良債権の買い取りを行う権限を与えるように議会に要請。買い取りは2年に限り、最も安値を提示した金融機関から買い取る「逆入札方式」をとるという。バーナンキFRB議長は議会で買い取りのベース価格は、簿価と受け取れる説明をした。そうであれば損失全額を納税者が負担することになる。買い取りそのものは評価できるとしても、簿価だとしたら問題含みだ。しかも、本当は買い取りよりもやるべきことが別にある。
米政府が導入しようとしているのは、かつてのS&L(貯金貸付組合)処理の際に設置した不良債権買い取り期間、RTC(整理信託公社)の現代版だが、現在の危機は、そんな米国内の中小金融機関の経営危機ではない。巨大な銀行や投資銀行が軒並み経営危機に陥り、しかも、証券化手法によって危機の導火線は世界中にバラまかれてしまっている。率直に言って、2年を費やして不良債権を順じ買い続けるというような悠長な対応では時間切れとなる。
日本でも90年代の金融危機の際、「共同債権買取機構」という日本版RTCが設立されたが、効果は限定的だった。金融機関の売却価格が簿価なのか、それとも時価なのかということで大論争にもなった。結局、機構が稼動しても、金融危機の拡大、深化の速さに買い取りが追いつけず、しだいに用をなさなくなった。今回の世界的な危機の深化速度は、当時の日本の危機より速いだけではない。その範囲が広大なうえ、危機の震源地が基軸通貨国なのである。通貨システムが震撼せざるをえない性格を有している。(中略)そんな情勢下にあって、米政府が90年代のRTCモデルを導入しようというのは、あまりに間に合わせの策と言わざるをえまい。
世界的な流動性危機の背景にあるのは、主に米国、そして欧州の巨大金融機関の資本不足にほかならない。それがあまりに明らかであるがために、歴史的と言えるほどの基軸通貨の流動性危機が発生しているのだ。米国は第2次世界大戦後、基軸通貨国となったが、その歴史の中盤から米国は節度を失った基軸通貨国として振舞ってきた。巨大な財政赤字を海外資本に依存する体質はその一例だ。その中で、化け物のように巨大化したのが投資銀行などのホームグラウンド、ウォール街だった。そのウォール街もまた節度を失って宴に明け暮れた。
しかし、いま発生しているのはウォール街だけを震撼させる出来事ではない。何よりも、米国政府はRTCというような悠長な枠組みではなく、1930年代の大恐慌の際に導入したRFC(金融復興公社)の現代版を設立し、公的資金投入による銀行、投資銀行からの株式買い上げを行うべきではないか。

確かに、1980年代のRTC(整理信託公社)のようなチンケな対策で、今回の金融恐慌が乗り切れるはずがない。それはその通りである。しかし、FRBバーナンキ議長は恐慌の研究家である。副島隆彦氏の『恐慌前夜』(祥伝社刊)によると「日本の昭和恐慌と高橋是清の経済政策」の論文もあるとのこと。ハーバード大学に提出した博士論文で「いざとなったらヘリコプターで空から紙幣を撒くようなことも辞さない」と書き、ヘリコプター・ベンと異名を持つ人物だ。2007年11月24日の記事「バーナンキFRB議長は今の金融不安を見越して選ばれた」 [1]
有事(金融恐慌)の際には、無制限にドルと米国債を金融市場に供給する。そのためにFRB議長に据えられた人物だ。(ただし、彼をFRB議長に据えたのがディビッド・ロックフェラーという点には疑問が残るが・・・)
いずれにしても有事のバラマキ司令官であるバーナンキ議長の構想が、中小金融機関の救済にすぎないRTC現代版といったチンケな方法にとどまっているはずがない。1930年代の世界大恐慌時の金融救済策RFC(金融復興公社)の現代版くらいは当然、構想しているはずだ。RFCの具体的な救済の仕組みは、公的資金で株式を買い上げることで資本注入するというものらしい。
しかし、それがアメリカ金融恐慌対策の本丸ではないと私は思う。本命は別にある。1930年代の世界大恐慌時にはなかった機関が現在はある。国際通貨基金IMFだ。IMFについてはウィキペディア [2]参照。

為替相場の安定のために、国際収支が悪化した国への融資や、為替相場と各国の為替政策の監視などを行っている。各国の中央銀行の取りまとめ役のような役割を負う。かつては融資を行う際に、内政不干渉の原則を守り、特に条件をつけることはなかったが、成果があがらない国も多かった。このため、1979年以降、「融資の効果を阻害するような政治状態の国」には、「政策改善」を条件にした(コンディショナリティ (Conditionality) )融資を行うようになった。この際に、対象国に課せられる要求のことを「構造調整計画 (SAP) (Structural adjustment) 」と呼ぶ。このIMFの構造調整プログラムにより、アフリカや南米、アジアなどの発展途上国では、様々な経済問題(失業など)が発生し、社会が混乱に陥った。

これまで発展途上国が通貨危機に陥るたびにIMFが介入してきた。アメリカの金融恐慌→ドル危機に対してIMFはどんな手を打ってくるのか? IMFこそ今回の金融恐慌対策の大本命なのではないか。
ところが、この3段構えの金融恐慌対策も、第一弾の金融安定化法案でさえ下院で否決され躓いている。「Bloomberg.co/jp」 [3]
第2弾のRFC(金融復興公社)は議会承認を得るにはさらにハードルが高いはず。
もたもたしているうちに、ドル・米国債暴落が始まり、一気にIMFが乗り出してくる可能性もあるのでは?
あるいは、こうも考えられる。発展途上国の通貨危機への介入がIMFの主目的なのではなく、ドルが崩壊の危機が瀕した時の介入こそが、IMF設立の本当の目的だったのではないか。(こういう視点で、IMFおよび世界銀行の仕組みを解明する必要があるのではないだろうか。)
(本郷猛)

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