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1.35兆ドルもの米地方債保証をしているモノラインが破綻すれば・・・

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アメリカには、「モノライン」という保証会社が12社ある。日本で言えば日本信販やオリックスのような、サラ金会社やリース会社のような会社で、いわばノンバンクである。そのうちの大手が、MBIA、AMBAC、FSA、FGICの4社。これらモノライン各社が1兆3500億ドルもの米地方債の保証をしているらしい。
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例えば、モノラインの商売の仕組みは、以下のようなものである。
ある人が日本の銀行から5000万円の住宅ローンを借りているとする。借りた人は日本の銀行に160万円の返済保証料を払う。この160万円の保証料(つまり5000万のローンの債務保証)を、日本の銀行からモノラインのような保証会社が160万円で引き取る。この5000万の住宅ローンが返済できない場合は、この保証会社が肩代わりして、融資した日本の銀行に支払う仕組みである。貸し倒れがなければ、モノラインはこの保証料をタダ取りできる。つまり、モノラインは160万円を受け取ることで5000万円分の債務保証しているということ。
金をもらって保証リスクを引き取る。そして、その保証リスクは金を払って転売される。これがデリバティブ商品(金融派生商品)の基本的な仕組みである。デリバティブ商品の契約残高は非常に大きいが、その保証料率(保証金の金額額/保証した契約金額)は上記の例では3%≒160万円/5000万円となる。このように低い保証料率で多額の契約債務を保証しているのがデリバティブ商品である。但し、保証対象の信用が高ければ保証料率は低くて済むが、信用が低くなれば料率が高くなる。
ところが、サブプライム・ローン危機で返済不能のローン債務者が急増し、貸し倒れリスクが跳ね上っている。そうするとモノライン自身の信用力=保証引き受け能力が疑問視され、モノラインが他者に転売する時に払うべき保証料率が跳ね上がる。2008年6月から、アメリカのモノラインの信用格付けがAAAから格下げされ、モノラインそのものに対する信用不安によって、モノライン1社あたり2000~3000億円の引当金を積み増さなければならなくなり、そのために資金を調達する必要に迫られている。この引当金を積まなければただちに債務超過、すなわち破綻である。
問題は、このモノラインが、アメリカの巨額な赤字を抱えた全米の地方自治体(地方政府)地方債を保証していることである。州政府や大都市政府の信用度が低いので、格付けを「AAA」とかに無理矢理押し上げるためにモノラインの保証を付けさせていた。地方公共団体だから簡単にはつぶれないという前提で保証の見積もりの料率を決めるため、これまでは安い保証料率でモノラインは引き受けていた。
ところがサブプライム・ローンなどと同じように、自治体にも破綻の危機が出てきた。そうすると保証料の料率が跳ね上がる。それだけではない。モノラインが破綻した場合は、地方債の暴落は不可避である。モノライン12社による保証残高は2006年段階で2兆1715億ドルあり、その内訳は証券化商品8237億ドル+米地方債1兆3478億ドルである。 『国際投信投資顧問』「投信新時代の投資戦略-進展する国際分散投資(2008年7-9月号)」 [1]
参考:『恐慌前夜』(副島隆彦著 祥伝社)
モノラインの破綻→アメリカ地方債の暴落を防ぐために、アメリカ財務省とFRBはどうするか?
『世に倦む日日』「米国金融産業のメルトダウン 」 [2]によると、FRBの総資産は9000億ドルしかない。そのうち米国債が4800億ドル、銀行融資残高が1500億、残り2700億ドルが米国債と引き換えで引き取った住宅ローン担保証券(クズ債券)である。
最新のクズ債券と米国債の交換というスキームだと、モノラインが破綻すると、その保証債務2兆1715億ドルと米国債とを交換するためには、FRB保有の米国債だけでは足らず、アメリカ政府はあらたに1兆6915億ドルもの米国債を新規に発行しなければならない(AIG救済の20倍もの資金)。それだけの米国債発行とドル紙幣印刷は確実に米国債を下落させる。モノラインの破綻が米国債暴落の引き金を引く危険性が高いのではないか?
(本郷猛)

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