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金貸しは教会と結託して、国家を支配した

Posted By hongou On 2008年7月28日 @ 11:59 PM In 08.近現代史と金貸し | 5 Comments

2008年7月14日の記事「英国・米国の金融力とは?」 [1]で紹介されていた『金融VS国家』(倉部康行著 ちくま新書) [2]に興味深い記述があった。金貸しとキリスト教の関係である。
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●手形取引の「発明」がもたらした金融拡大
現代において金融取引で一般的に利用されている手形は約束手形であり、最近ではCPや電子CPといった形式に移行し始めているが、そもそも遠隔地貿易の際に利用されたのは為替手形であった。為替手形とは、手形を振り出す者が、第三者である支払人に受取人への支払いを委託するもので、通常の約束手形のような2者間取引ではなく、3者が絡む取引である。
これを「発明」したのが中世イタリアの商人であり、それを利用して富を蓄積したのがイタリアの銀行であった。それは、中世キリスト教社会において必ずしも歓迎されなかった「金利の受け取り」を巧妙にカモフラージュして、交易決済と融資という要請を一手に引き受けるという画期的で実利的な高金利ビジネスを生み出したからである。
フィレンチェとロンドンとの間で行われる交易を想定してみよう。香辛料やシルクを購入するイタリア商人が、それらをガレー船で北へ運びロンドンの商人に販売する。イタリアの商人は、ロンドンの商人を支払人とする為替手形を振り出して、受取人である金融機関、たとえばメディチ銀行へ持ち込むのである。メディチ銀行はその手形を持ち込んだ商人に手形に記載された「1000フローリン」を支払う。その手形には、ロンドンの商人が受取人のメディチ銀行あるいはそれが指図する者へ「200ポンド」支払うと書いてある。メディチ銀行は、ロンドンの支店またはコルレス契約(手形取立などの取引条件を定めた契約)のある銀行を通じてその商人から200ポンドを回収するのである。だがそこにはフローリンとポンドの為替リスクが生じる。
リスクに敏感な銀行家は、それをヘッジするための最適な方法は、逆の取引をロンドンとフィレンチェの間で行うことだと気づく。つまり綿織物を買いつけてイタリアへ輸出するロンドンの商人を見つければよいのである。彼が、フィレンチェ商人を支払人とする為替手形を振り出して、200ポンドを手に入れるのと引き換えにイタリアで1200フローリンを支払うように委託すれば、メディチ銀行の懐には自動的に200フローリンの利益が転がり込む仕掛けである。

●教会とタッグを組む金融業者
当時の神学者たちがこの取引が高利貸しにあたるかどうか、悩んだのも無理はない。金利を邪悪視したのはイスラム教だけではなかった。キリスト教もまた、高い利息を稼ぐ金融取引は神と自然法に背くものとして禁止していたのである。12~13世紀には、高利貸しがキリスト教徒として埋葬されるのを教会から拒絶されたという話も伝わっている。
結局ローマ教会は、為替手形による取引は為替リスクをとった商いだとして、高利貸しではないとの判断を下した。そして、それは銀行と教会との距離感をより緊密なものにしたといえるかもしれない。金融機関は、教会が彼らのビジネス上のきわめて重要なパートナーになることを悟っていく。同時にこの社会的権威による金融の「認知」は、お金のビジネスが国際的に飛躍するための貴重なステップとなったのである。

●「金融御三家」台頭の背景
金融の初期段階において、資金が資本に転換される形態は金貸しであり、それがクロスボーダー取引となって国際資本市場が生まれる。そのなかで資金を資本化していくのは、イタリアのメディチ家やドイツのフッガー家、そしていまなお健在であるロスチャイルド家などの金融資本である。

●原型をつくったメディチ家
「為替手形」をシステム化することによって現代に通じる国際金融の原型を作り上げたのは中世イタリアであり、そこで金融を中核に新興勢力として台頭したのが、中世芸術のパトロンとして有名なメディチ家であった。
彼らは為替手形を使った融資で蓄積した富を、教会の存在を利用してそれをさらに増殖させるという「金融の成長本能」を見事に発揮した。メディチ家は、さらにネットワークを活かして旧来の貴族勢力に取り込み、ローマ教会にも接近して徐々に頭角を現すようになる。
フィレンチェに設立されたメディチ家の銀行のなかでも、教皇のお膝元にあるローマ支店の役割はきわめて重要であった。メディチ家は財務代理人として、さらに戦費を調達する銀行として、きわめて重要な取引関係を他ならぬローマ教会と築いたのである。当時の資料によれば、メディチ銀行の大半の利益はローマから上がっていたといわれている。

●ハプスブルク家を支えたフッガー家
現在チロル州の州都として知られるインスブルックで銀や銅の権利を支配したフッガー家は、神聖ローマ帝国のハプスブルク家が同地へ王宮移動したことによって、さらに関係を深めていく。
フッガー家はローマ教会の「免罪符(贖宥状)販売」に深く関わったことで知られている。フッガー家が贖宥状販売をサポートしていたのは、何よりもローマ教皇庁への融資が貸し倒れになることを恐れていたからである。だが新旧宗教の対立で1618年に始まった30年戦争は欧州中部の交易に大打撃を与えることになり、フッガー家のビジネス衰退は決定的となった。金融が宗教と結びついた結果、金融自身が宗教戦争の波に飲み込まれる結末となったのである。

●ロスチャイルド家の成功
メディチ家もフッガー家も当時の権威を利用しつつ国際金融へ羽ばたく足がかりを摑みながら、結局決定的なステップに踏み出すことができなかったが、それを実現したのは、18世紀後半に小銭売買からのし上がったロスチャイルド家であった。
ロスチャイルド家は、欧州全般を情報ネットワークでつなぐ国際金融ビジネスへと展開していくために、動乱の続く欧州のなかで強大な権威と同盟する戦略をとり始める。ユダヤ民族に強い抵抗を示していたオーストリアですら、宰相メッテルニヒがロスチャイルドを重用し始めたのもひとつの成功例だろう。国際金融黎明期の金融資本の成立と発展は、こうした社会的権威との関係なしに語ることができないのである。

●戦争と中央銀行
イングランド銀行も国家の戦争費用の出費を賄う国債引き受け機関としての役割を担って生まれたものであり、その誕生の背景はもっと生臭いものだといえよう。
度重なる欧州国家の戦争の主な原因は、17世紀を吹き荒れた宗教をめぐる対立であった。メディチ家やフッガー家など近世の資本家達がその発展を依拠したキリスト教が、今度は戦争を通じて国の財政を混乱させることになり、結果的にはそれが金融制度の整備を促すことになった、と見れば、金融と宗教との間には深い因縁があるようにも思えてくる。
17世紀の英国とは、ほぼキリスト教を巡る内乱の時期であり、それが国家財政の混乱をもたらすことになった。名誉革命後、ライバル国であるカトリックのフランスとの対立は激しくなり、英国はさらなる戦費拡大に直面する。そこに、国債を引き受けるイングランド銀行の設立が提案されたのは、時代の要請でもあった。その欧州における戦火のなかで英国が勝ち残った背景に、国内で戦費調達の仕組みが整っていたことが挙げられる。物流の裏側に金融が隠れているように、当時の政治や戦争の裏側には中央銀行の役割が隠れていたのであった。

「金貸しとキリスト教会の結託」というのは興味深い視点である。考えてみれば、金貸しと宗教は「騙し」という共通点がある。金貸しと宗教という二つの騙し存在が結託して、国家という力の存在を間接支配してきた様が見て取れる。
国家も最初は力の序列の強制共認で統合していたが、国家が秩序化・安定化し、生存圧力が衰弱した結果、力の序列だけでは統合できなくなり、支配共認として宗教の力を借りなければならなくなった。これは古代から中世の構造だが、近世ヨーロッパでは金融がキリスト教会を取り込んで国家を間接支配していく。これがローマ教会と結託したメディチ家やフッガー家だろう。
次にキリスト教の中から、より金貸しにとって都合のよい分派が生まれる。旧派であるカトリックは国家による身分秩序を正当化した思想であり、同時に私益の拡大を戒める思想である。金貸しにとっては都合が悪い。そして私益の追求を推奨する新派。これがプロテスタントである。
16世紀の宗教改革や17世紀のヨーロッパ宗教戦争も、その背後にあるのは、旧派カトリックを支援した金貸し(フッガー家・メディチ家)VS新派プロテスタントを支援した金貸しの覇権争いという構図だろう。17世紀の宗教戦争とは、金貸し同士の代理戦争だったのではないか。この代理戦争によって国家秩序は混乱し財政は窮する。金貸しが国家につけこむスキが生まれた。そして、戦費の調達を大義名分に金貸しが通貨発行権を独占したのである。
このように、金貸しが国家を支配するための武器として、同じ騙し存在であるキリスト教会を秩序破壊の尖兵として利用したというのは注目すべき事実である。そして、現在の尖兵がマスコミであることは言うまでもない。
(本郷猛)


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[2] 『金融VS国家』(倉部康行著 ちくま新書): http://www.amazon.co.jp/%E9%87%91%E8%9E%8Dvs-%E5%9B%BD%E5%AE%B6-%E3%81%A1%E3%81%8F%E3%81%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-724-%E5%80%89%E9%83%BD-%E5%BA%B7%E8%A1%8C/dp/4480064281

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