- 日本を守るのに右も左もない - http://blog.nihon-syakai.net/blog -

農産物>資源の逆価格格差こそ、科学技術による生産性上昇の正体では?   

%E7%9F%B3%E6%B2%B9.jpg
『るいネット』 [1]に、12/29なんでや劇場の論点が投稿されていた。「金貸し支配とその弱点、’08経済破局は来るのか1~市場の起源、原資拡大の方法 」 [2]である。
いつも応援ありがとうございます。


1. 市場の起源論

・ 市場の起源について、食糧等の日常品の物々交換が起源であるとする経済学は根本的に誤りである。弓矢の発明以降、原始共同体が規模を拡大し、縄張りを接する緊張状態が生まれたが、そこで発生した物流網とは貴重品を中心とする贈与関係である。その目的は集団間の緊張関係を緩和させることであり、集団内で働いていた共認原理を集団外にも適用したものである。緊張関係が前提となっている以上、集団の存否を決定するような食料それ自体を他集団にゆだねるような交換は成立しようがない。
・ しかし約5500年前の乾燥化によって、牧草地を失った遊牧集団の中から、贈与にる共存共栄を破棄し、自集団第一の正当化観念から他集団への略奪を開始した部族が登場する。そしてこの略奪が玉突き的に波及し、支配被支配の関係が構築されると共に、国家への冨の集中が進む。
・ この国家に寄生し、そのおこぼれを預かろうとする商魂逞しいものたちによって、市場は生み出された。実際、シルクロードは貴族階級の宮廷サロンを彩る貴金属や絹織物etcといった高級品が行きかう商品市場であった。つまり、注目すべきは市場とは、その起源からして、生活に必要不可欠なものの上に作られたものではなく、権力と冨の集中の中から、その混乱や腐敗に乗じて生み出されたものであるという点にある。

2. 原資拡大の方法

・ 国家に対する寄生虫である市場がその資金源を拡大させていく方法は、概ね、以下の4つがある。
略奪・・つまり、武力にものを言わせて、財を奪い取るという方法だが、これは市場の初期形態にとどまらず、近代市場から現代のグローバリズム資本主義までをも貫く、極めて本質的かつ普遍的な方法論のひとつである。近代市場はアメリカ大陸とアジア大陸の豊かな冨の収奪の上につくられたし、イラク戦争は、アメリカによる石油資源の収奪に他ならない。
騙し・・貴金属をはじめとする市場商品は突き詰めると、なくても困らないものである。しかし、それが希少価値etcといった美辞麗句の下では、圧倒的に価値の高いものとみなされ、幻想価値→幻想価格が形成される。人々が孕む性幻想や快美欠乏を梃子として作り出される市場商品と農産品の価格格差。それ自体が騙しであるが、この騙しこそが市場拡大の固有の原動力である。
・ この他に、科学技術と勤勉性が、市場拡大のモーターとして取り上げられるが、これらは概ね、民族性とも連動するファクターでもある。日本人は科学技術と勤勉性こそが市場の原動力であると考えがちであるが(事実、日本人のとりえはとりわけ勤勉性しかないのだが)、近代市場拡大の本流は、略奪と騙しという西洋の民族性を背景としているという事実を見失ってはならないだろう。

ここで、「科学技術によって生産性が上昇したのはなぜか?」という提起をしたい。
科学技術による生産性の上昇とは、単位労働時間当たりの生産量が増えたということである。
『晴耕雨読』「産業主義近代の終焉」 [3]でも、生産性とは一人日の労働が生み出す生産物の量(≒労働価値)であり、生産物の価値→価格は、生産物一個をつくるのに投入される労働量(労働価値の逆数)によって決まるとしている。
つまり、生産性の上昇とは、生産スピードが上がったにすぎない。ある生産物一個を作るために必要な原材料の量が減るわけではない。むしろ、必要な原材料は増えているはずである。江戸時代以前の日本人はいろんなものを有効活用して、無駄なゴミがほとんど出なかったのに対して、近代においてはゴミが増える一方である。ということは、生産物一個を作るために必要な原材料の量という点では、近代以降、逆に非効率になっている疑いが濃厚。
では、生産スピードの上昇をもたらしたのは何か?
石炭・石油といった資源を燃やして動力エネルギーへと転換し、そのエネルギーで機械を駆動させ生産スピードを上昇させた。それが近代科学技術の効用である。しかし、燃料(石油・石炭)や機械の原料である金属資源の価格が人件費より高ければ、機械を使わず手作業で生産した方が生産物価格は安くなりペイしない。ということは、(欧米の)人件費よりもはるかに安い価格で燃料や金属資源を手に入れたことが、科学技術による生産性上昇の秘密である。
実際、燃料や金属資源確保のために、近代の欧米列強は植民地争奪戦を繰り広げた。とりわけ20世紀の戦争は資源争奪戦であった。日本もそれに巻き込まれたわけだが、科学技術による生産性の上昇の源泉は、後進国からタダ同然で燃料や金属資源を仕入れたことにある。 後進国の資源は欧米の農産物よりもはるかに安く買い叩かれたはずである。前期市場拡大の秘密が市場商品>農産物の価格格差だとすれば、後期市場拡大の秘密は農産物>資源の逆価格格差であり、この逆価格格差こそ、近代先進国の生産性の上昇の源泉ではないか。
だからこそ、20世紀の列強は資源争奪戦を繰り広げたわけだし、資源を安価で手に入れることに成功した国は工業力が上昇し市場が拡大した。日本のように資源確保に失敗した国は工業力にも限界があり、戦争に負けたという事実とも符号するではないか。従って、市場拡大の源泉は①掠奪⇒戦争と②騙し⇒価格格差と③勤勉性に集約されるはずである。
(本郷猛)

[4] [5] [6]