米政府は10月に行われたG7において中国や産油国などが設立している「政府系ファンド(ソブリン・ウエルス・ファンド:SWF)」の監視強化を提案した。
元々、SWFは、クウェート、アラスカ、アラブ首長国連邦が1950年代~1970年代に、石油輸出の収益減に備えて設立したもので、当時はIMF(国際通貨基金)も経済の安定に役立つとしてファンド設立を支持していた。
しかし、世界的な貿易の伸びや原油・資源輸出による収益の運用拡大を背景に、こうしたファンドの数や資産は膨れ上がる一方、ロシアやノルウェーも年金目的のファンドを設立し、中国は外貨準備運用の高リターンを目指し、専門機関の設立に着手し始めている。
そして、今年のSWFの運用資産は、2兆5000億ドルと推定されており、民間のヘッジファンドの運用資産を上回るようになった。
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参考:〔情報BOX〕世界各国の主な政府系ファンドより [1]
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最近では、SWFにより、先進国の有名企業が買収される例も目立ち始めている。
9月には、UAEのドバイ取引所が、米ナスダック市場の運営会社の株式を大量取得すると発表し、アブダビのSWFが米投資ファンドの株式取得を発表するケースも出てきている。
こうしたSWFの動きは、国際金融市場のかく乱要因にもなりかねない。
SWFの大半は、資産配分や投資戦略についての情報をあまり開示していない。
買収した企業やその国への政治的な影響力をもつ可能性もあり(商業的ではなく政治的な買収)、各国の懸念は高まっている。
こうした中、G7は今回、SWFを運営するUAEや中国など8カ国の国際金融担当幹部と非公式会合を開催、政府系ファンドの情報公開を求めた。
しかし、政府系と民間ファンドを区別することへの問題も指摘され、G7は結局、明確な対策を打ち出せずに終了している。
米大手証券のモルガン・スタンレーによると、2007年9月の政府系ファンドの資産残高はUAEを筆頭に29カ国・地域で計2兆8274億ドル(約330兆円)。
2011年までに6.5兆ドル(約760兆円)に増え、世界の外貨準備高などの合計額と並び、さらに2015年には12兆ドル(約1440兆円)に膨らむと予想している。
今後、世界の市場は、SWFの動きに大きく影響され、一国の暴走が世界経済を混乱に陥らせる危険性が急速に高まりつつある。