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ドル一本槍の支配戦略が転換した?

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田中宇の国際ニュース解説に、注目すべき記事があった。11月20日付けの記事「原油ドル建て表示の時代は終わる?」 [1]
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▼湾岸共通通貨で石油価格を表示する

OPECのサミットでは、世界を揺るがす議論が展開された。最近のドル崩壊を背景に、反米的なイランとベネズエラの代表が「ドルは紙くずに近づいているのだから、原油価格をドル建てで表示するのはもう止めて、代わりに(ドルやユーロ、円、ポンドなど)各種通貨を混合した通貨バスケットで原油価格を表示するよう、制度を変えるべきだ」と主張した。イランとベネズエラは「問題なのは原油価格が高騰ではなく、ドルの下落だ。アメリカが引き起こしたドル安こそが問題だと、今回のOPECの共同声明で明確に表明すべきだ」とも主張した。
 これに対し、親米で慎重派のサウジアラビアは「われわれが共同声明の中で、ドル安について議論したと認めただけで、ドル相場が崩壊し、良くない結果を生む」と反論し、ドル安懸念を共同声明に盛り込むことを阻止した。とはいえサウジは、原油価格の中心をドル建てから通貨バスケット建てに移行する案について、12月5日にアブダビで開かれる予定の次回のOPECサミット会議までに蔵相会議を開き、詳しく検討することに同意した。
これまで原油の国際価格は、ドル建て一本だった。そこにOPECが「GCC共通通貨建て」の価格を導入することは、ドルが戦後60年間持っていた国際決済通貨としての地位を失うことを意味する。この地位喪失は、世界各国がドルを備蓄通貨として保有してきた従来の習慣を縮小させ、各国は米国債を買ったりドル建てで対米投資したりする額を減らすことになり、ドル下落に拍車をかけ、アメリカの金融相場は下落し、米国債は買い手が減って金利が上がる。
今後半年ぐらいの間に、湾岸通貨は通貨バスケットへのペッグに切り替わり、OPECは湾岸通貨建て(最初はサウジ・リヤル、いずれは湾岸統合通貨)での原油価格の表示を開始するという、イランがOPEC会議で主張した展開があり得る。ドルが下落する中で、OPECが湾岸通貨建ての原油価格の表示を開始することは、悪循環的にドル下落に拍車をかけ、ドルが原油価格の中心的な値付けである状態を終わらせる。

▼ドル離れを黙認するアメリカ

常識的に考えると、アメリカはGCCやOPECのドル離れを許さないと思われるが、現実の展開を見ると、実はアメリカは産油国のドル離れを容認している。アメリカの影響下にある国際機関であるIMFやG7が昨年春、世界的な不均衡(アメリカの巨額な経常赤字)を解消するため、湾岸産油国と東アジア(中国と日本)に、各地域の地域通貨を作ってドル離れを進めるよう求めたからである。
 以前の記事に書いたが、アメリカは自国通貨が唯一の国際決済通貨だったことで、世界経済の成長を維持するため、米国民に無理に消費させたり、財政赤字を増やしたりといった負担を強いられてきた。その負担はもう限界なので、ユーロのほか、新たに富を蓄積している湾岸産油国と中国(と日本)に、地域的な基軸通貨を新設してほしいと、アメリカは求めている。

9月5日の記事「ドル支配の基盤は軍事力では?~軍事力本位制仮説」 [2]でも書いたが、アメリカのドル支配戦略は次のようなものだ。
ドルを基軸通貨にして、過剰消費しまくる。
その消費資金を連邦準備制度がドル紙幣を印刷しまくることで供給する。連邦準備制度を握る国際金融資本は、莫大な利息で儲ける。
ところが、この戦略には矛盾がある。
過剰消費すればするほどアメリカの貿易赤字・財政赤字は拡大し、ドルの価値は下落していく。しかし、紙くずのような紙幣とみなされれば、誰もドルでの取引に応じてくれない。
この矛盾を克服するためにとった手段が、まずは金と交換可能であるかのように装う「擬似金本位制」、それが崩壊すると、石油の取引通貨をドルに限定する「石油本位制」によってドルの信用を繋ぎとめてきた。
「石油本位制」によってドルの価値を維持しつつ、過剰消費を続けることは、アメリカとその背後の国際金融資本の基幹戦略だった。
この戦略を支えるのがアメリカの軍事力であり、例えば「石油を取引できる唯一の通貨ドル」という特権の代わりに、アメリカはペルシア湾岸の親米産油国を、他国からの侵略や国内の政変から守ることを約束している。
その中東産油国が石油のドル売買を見直すということは、国際金融資本→アメリカの基幹戦略が崩れることを意味する。
いや、むしろ逆ではないか。
ドル一本槍りの支配戦略に限界を感じた国際金融資本が自ら戦略を転換を始めたと考えるべきではないか。親米の最右翼であったサウジアラビアまでもがドルによる石油売買を見直を始め、ドル離れをアメリカが容認しているのが事実だとすれば。
国際金融資本がドル支配一本槍の支配戦略に見切りをつけ、アメリカからの離脱を本格的に開始したのではないだろうか。例えば、ヨーロッパに拠点を移行させ、中国・ロシア等を相手に商売を拡大する。
サブプライム問題もこの戦略転換の中の一局面(序曲)にすぎないのではないだろうか。
この仮説に拠れば、ドルとアメリカ国債が下落しても構わないということであり、日本は危機的な事態に追い込まれる。これまで日本は、ドルを溜め込み、アメリカ国債を買わせられ続けてきたからである。多額の借金を踏み倒されるのに等しい所業である。ドル一本やり支配からの転換を見越して、アメリカは日本に、最近では中国にアメリカ国債を買わせ続けてきたのかもしれない。
(本郷猛)

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