
『晴耕雨読 [1]』の早雲氏が提起するアメリカ連邦準備制度(FRB)の通貨制度「国債本位制」とは、どのような仕組みなのか?
『晴耕雨読』「連邦準備銀行と日銀の違い:ドル紙幣は貨幣ではなく『利子がつかない小額の国債』 [2]」の論点を整理してみる。
戦前のイングランド銀行や日銀は金準備高を基礎に発行した紙幣を銀行に貸し出しすることを通じて通貨を供給していた。これが金本位制。
ところがアメリカ連邦準備制度(FRB)は、金を保有していなくてもドル紙幣を発行することができる中央銀行制度である。実際、FRBはほとんど金を保有していない。FRBの全資産のうち金の比率は10%程度で、米国債の比率が90%近くに達する。つまり、米国債がFRB資産のほとんどを占める。一方、全負債のうちドル紙幣が90%近くを占める。つまり、金準備高に拘束されずにドル紙幣を発行でき、そのドル紙幣で米国債を買っているのが連邦準備制度である。
連邦準備制度は、国家(政府)が差し入れる「利子がつく巨額国債」の代償としてドル紙幣=「利子がつかない小額に分割された国債」を発行することで通貨を供給している。ドル紙幣は、連邦準備制度が受け取った「利子がつく巨額国債」を1ドル札・5ドル札・10ドル札・・・といった小額の価額表示をした紙切れに分割して流通させているのに等しい。逆に言えば、米国の「利子がつかない小額の国債」証書が米国内のみならず世界の基軸通貨になっているということ。
ドル紙幣の信用を保証しているのは国家であり、国家が国債債務の履行を担保にドル紙幣の債務(信用)を保証しているということになる。これが早雲氏が「国債本位制」通貨を言う所以である。
米国連邦政府の徴税は、国債が分割されて出回っているドル紙幣を回収する作業とも言える。連邦準備制度が国債を売却すれば、「利子がつかない小額の国債」であるドル紙幣は市場から回収される。このようにして、連邦準備制度は紙幣供給量を操作している。
しかし、より重要なことは、ドルの発行残高が増加するほど、米国債(連邦政府債務)が増加する仕組みであるということ。財政収支が黒字を続け、回収したドル紙幣で国債を償還していけば、経済社会で通貨不足が起きるという奇妙なことが起きる。逆に言うと、国家の財政支出が増えれば増えるほど、連邦準備制度は利子がつかないドル紙幣を発行して貸付を行い、利息分が儲かる制度である。
つまり、国家の借金が増えるほど、連邦準備制度は貸付利息で儲かる仕組みだが、8月27日の記事「通貨制度の歴史① [3]」でも指摘したように、紙幣の原点は2つある。国家の借用証書(国債)と金融資本(銀行家)の金の保管証券。金の保管証券が金本位制の原点だとすれば、国家の借用証書(国債)を原点としたのがアメリカ連邦準備制度FRBということになる。
それを実現可能にしたのが、金の裏づけなしに紙幣が発行できるというシステムである。なぜアメリカはそんなシステムを採用したのか?
連邦準備制度設立は第一次対戦直前の1913年だが、当時アメリカは35億ドルもの債務を抱える世界最大の債務国。金の保有高不足で金本位制では紙幣発行ができなかったので、やむなく「国債本位制」を編み出したのだと考えられる。
つまり、金本位制では、市場競争の勝ち組(当時であればイギリス)に金が集中し、それ以外の国は金不足で紙幣が発行できず、市場拡大ができないことになる。実際、大量の軍需→資金需要が発生した第一次大戦中と需要が急縮小した1930年世界大恐慌以降はどの国も、金本位制を停止し国家による管理通貨制度に移行した。
国家による管理通貨制度は一見アメリカの国債本位制と似ているが、両者の違いを明確にしておく必要がある。
アメリカの国債本位制ではFRBという国家から独立した民間企業(金融資本)が金融政策を握っているに対し、戦前の国家による管理通貨制度では金融政策が国家の権限である点に違いがある。おそらく大恐慌に対する社会秩序維持の必要と戦争圧力によって国家が金融政策の権限を金融資本から奪還したのが、国家による管理通貨制度であろう。実際、第二次大戦前後にイングランド銀行をはじめとする世界各国の中央銀行の大半は国有化されている。この点は、アメリカFRBの国債本位制と明確に区別する必要がある。
では、なぜドルが世界の基軸通貨となったのか?
(本郷猛)